「ありがとう」を伝えたい時は、いつも遅すぎる…100万人が泣いた! 亡き父への愛の手紙を、鉄拳がパラパラマンガ化!

マンガ・アニメ

2017/3/4

 あたり前のようにそばにいる、大切な人。心の底では感謝をしながらも、照れくさくてその気持ちをなかなか口に出せない。そして二度と会えなくなってから思うのだ。「ありがとうと伝えておけばよかった」と。

『いつか伝えられるなら』(鉄拳:画、つたえたい、心の手紙(くらしの友):作/SBクリエイティブ)は、亡くなった大切な人への思いを綴った手紙を公募する企画「つたえたい、心の手紙」の受賞作を、『振り子』(小学館)などの作品で注目される鉄拳がマンガ化したもの。公開されたYouTubeの動画は多数のメディアに取り上げられ、100万PVを超えた。号泣した、共感したという声が多いのは、それだけ大切な人が生きているうちに感謝を伝えられなかった人がいることの証だろう。

 パラパラマンガ化された手紙「お父さんは愛の人」には、子供の頃から父親の大きな愛を受けて育った一人の女性の、父親への感謝の気持ちが綴られている。子供の頃の思い出から始まり、結婚、離婚、出産を経験した彼女が、認知症を発症した年老いた父親を介護することになる……という構成だ。実の親子であっても、どうしても介護というとネガティブなイメージが付きまとうものだが、手紙を書いた女性に介護への苦悩は全く感じられない。むしろ、彼女はこう綴っている。

「夜中にトイレに連れて行ったりお尻を拭いてあげたりするようになったとき、涙が出るほど嬉しかっとよ。(中略)……やっと恩返しができるっちゃもん。」

 もちろん元気だった父親が、自分のこともままならない状態になっていく姿を見るのは、辛かっただろう。でも、彼女が父親から受けた愛情とこれまで育ててくれたことへの感謝は、介護という難題をも物ともしないほど大きいものだったに違いない。本書を読む多くの人は、このくだりで涙腺が崩壊するはずだ。鉄拳の画も憎い。マンガはほぼ手紙に忠実に再現しているが、父親が“あの言葉”を言う際の演出は、さすがとしか言いようがない。ぜひ実際に読んで確かめてほしい。

 また本書には、「お父さんは愛の人」以外にも7つの手紙が収録されている。ほとんどが子から親へ宛てたものだが、中には夫から亡くなった妻へ宛てた手紙もある。突然の事故で両親を失ったことから立ち直ろうとする娘の決意、3人の子を残して逝った妻の「お料理ノート」の思い出……。シチュエーションはすべて 異なるが、すべて の手紙から失ってしまった大切な人への感謝と愛情が痛いほど伝わってきて、つい自分と重ね合わせてしまう。泣かずに読むことは難しい。

「お父さんは愛の人」は、こんな言葉で結ばれている。

「私もお父さんみたいな愛の人になるけんね。だって、お父さんの愛から生まれて愛で育った娘やもん。」

 たとえ結果的に直接感謝を伝えられなかったとしても、親の愛は着実に子に受け継がれていくのだろう。でもできるなら、本書が大切な人と一緒にいられる時間を愛おしむきっかけとなり、一人でも多くの人が直接「ありがとう」と伝えてほしい。親であり、子であり、大切な人を持つすべて の人の胸に迫る作品だ。

文=佐藤結衣