熱い!!! 武将・黒田官兵衛の一生を追ったコミック10巻完結!【名シーンBEST3】

マンガ

公開日:2017/3/25

『義風堂々!! 疾風の軍師 ‐黒田官兵衛‐(ゼノンコミックス)』(原哲夫・堀江信彦:原作、八津弘幸:脚本、山田俊明:作画/徳間書店)

 『義風堂々!! 疾風の軍師 ‐黒田官兵衛‐(ゼノンコミックス)』(原哲夫・堀江信彦:原作、八津弘幸:脚本、山田俊明:作画/徳間書店)は、戦国武将たちの「生き様」を描いた「熱い!!!」物語である。

 主人公の黒田官兵衛は風のように「自由」を愛す戦国一の智将。鋭い洞察力と機転で戦国の世を生きる。女好きで少し風変り。つかみどころのない一面もあるが、「家族」「仲間」「友」に対する想いは誰よりも強い。「義」の心を持ち、「粋」でもある。とんでもなく「かっこいい」男だった。(惚れた……)。

 その黒田官兵衛が織田信長や豊臣秀吉、ライバルの竹中半兵衛(たけなか・はんべえ)たちと関わりながら戦国時代を疾駆する本作は、3月に発売された10巻を以てついに完結を迎えた。そこで、全巻を振り返り「個人的名場面ベスト3」を考えてみた。

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第3位「官兵衛の妹・志織(しおり)死す」≪第3巻≫

©原哲夫・堀江信彦・八津弘幸・山田俊明/NSP 2013

 官兵衛の妹、志織は浦上氏へと嫁いでいく道中にて、その婚姻を阻みたい赤松一派に襲われてしまう。官兵衛は危機を察知して救出に向かうが間に合わず……。実は官兵衛と志織は血のつながっていない兄妹で、言葉にはしないが、憎からず想い合う仲であった。

 その志織が政治抗争に巻き込まれ殺されてしまったシーン。初めて大切な人を失った官兵衛は、志織の死をきっかけにして戦国の世の悲しみを知り、本当の意味で大人になったのではないだろうか。

第2位「信長、天下を語る」≪第8巻≫

©原哲夫・堀江信彦・八津弘幸・山田俊明/NSP 2013

 天下統一を目前に控えた織田信長。官兵衛にとって信長は「面白き世を築いてくれる」希望であり、また「信長に天下をとらせる」という早世した友(竹中半兵衛)との約束もあったため、好意的に見ている相手であった。

 その信長が「天下」に対して放ったセリフ。「天下とは深い地の底にある」。
冷酷無慈悲なイメージの強い信長だが、本作では「天下を治めるために流した血」に対して「まったく平気だったわけではない」ことになっている。(実際の信長がどう考えていたかは不明だが……)

 官兵衛も語る。「血を流すは斬られた者ばかりとは限りませぬ」「斬った者もまた、目に見えぬ血を流しまする」と。天下統一のために犠牲にした多くの「命」について、猛々しく傍若無人な信長が、心の底では懊悩していたと分かるこのセリフ、グッときた……。

第1位「永遠のライバル! 竹中半兵衛との最終対決」≪第7巻≫

©原哲夫・堀江信彦・八津弘幸・山田俊明/NSP 2013

 戦国1、2を争う軍師として、「二兵衛」と並び称された官兵衛と竹中半兵衛。その二人が最後の「軍略対決」をするのが荒木村重(あらき・むらしげ)という武将の立て籠もる「有岡城の戦い」だ。

 信長に謀反を起こした村重の「説得」のため、官兵衛は有岡城へ赴くのだが対話ができず捕らえられてしまう……というのが通説だ。しかし本作では「友」と慕う村重を放っておくことができず、自ら牢に入り、軍略面から村重軍を助ける。それに対するのが、信長軍に属する竹中半兵衛だ。

 二人は直接刃を交えるわけではないが、軍師としてお互い「策の読み合い」をする。いわば「想像上の戦い」だ。だが「牢屋」と「戦場」という遠く離れた場所でも、お互いを意識し、相手の出方を考える「心理戦」は、いわば「軍師の頂上決戦」。激しいアクションシーンではないけれど、手に汗握る展開に誰しも惹き込まれた名場面だったと思う。

 この時、死期を悟っていた竹中半兵衛。死の間際に黒田官兵衛というライバルに出会ったことは、軍師半兵衛にとって何よりの幸福だったと分かる7巻。そしてその「友情」と「約束」……全体的に熱い内容だった。

 以上が、個人的名場面の3シーンだったが、正直選抜するのが難しかった。
本能寺の変(信長の最期)とか、明智光秀VS官兵衛とか、家康VS官兵衛とか、最終巻ラストの官兵衛とか、熱い!!! 場面はたくさんあった。

 読者のみなさんにはぜひ、全ての「熱い!!!」を感じてもらいたい。戦国時代の面白さと義を貫き潔く生きる武士たちのかっこよさに、胸を打たれるだろう。

文=雨野裾