海外ドラマでチェックすべきは「第○話」! その理由とは? 力作ぞろいの背景にあった製作側の懐事情

エンタメ

公開日:2017/3/30

『マネジャーの最も大切な仕事 95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力』(テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー:著、樋口武志:訳/英治出版)

 日本のテレビが視聴率低下にあえぐ一方、昨今は海外ドラマの盛り上がりがみられる。きっかけとされるのは、端末を問わずいつでもどこでも番組を見られる「VOD(ビデオ・オン・デマンド)」サービスの台頭。「Hulu」や「ネットフリックス」、大手通販サイトのAmazonによる「Amazonプライムビデオ」など海外勢のほか、国内でもVODサービスへ参入する企業が増えている。

 かつては“二流”と呼ばれていた海外ドラマが、なぜ今、快進撃をみせているのか。その秘密を解き明かす一冊が、海外ドラマ評論家・池田敏さんがまとめた『「今」こそ見るべき海外ドラマ(星海社新書)』(講談社)である。

◎映画界からも多様な人材。製作費が増加する海外ドラマ事情

 数多ある海外ドラマであるが、昨今は本場・アメリカを中心に「映画に匹敵する役割を期待されるようになった」と著者は解説する。時系列的には動画配信サービスが普及する以前に「多チャンネル先進国アメリカにおけるケーブルTVの進化」が背景にあったというが、それにつれて、昨今は製作費も軒並み増加の一途をたどっているという。

advertisement

 現在の製作費は「一話あたり500万ドルから700万ドル」と語るのは、著者が2015年秋に取材したという、日本人俳優として人気シリーズ『HEROES』などで活躍するマシオカである。

 参考までに、2000年代に生まれた世界的な大ヒットシリーズ『CSI:科学捜査班』は一話あたり250万ドルで、およそ10年という期間で製作費は倍増したことになる。仮に一話あたりが500万ドルであれば、シーズン全10話を通して5000万ドルにもなるが、世界的なマーケットとなった今では、放送権、動画配信権、ソフト化権などの二次的な利益での回収を製作側も見込んでいるというわけだ。

 さらに、昨今は映画界からも多様な人材が流れている。本書ではゾンビ映画の代名詞としても知られる映画のドラマ版『死霊のはらわた リターンズ』を手がけたサム・ライミなどが例示されているが、近年は、総売り上げを予測しづらい映画ではなく、加入者の会費から売り上げを計上できる動画配信サービスなどによる「サブスクリプション・ビジネス」に期待をかける風潮もあるという。

◎海外ドラマを知りたいならまずは“第1話”を試してみよう

 実際に動画配信サービスを見てみると、いったいどれから見ればいいのかと目移りするほどの作品が並んでいる。では、今から楽しみたいならどこを入り口にすべきかということだが、著者がおススメするのは「キーワード」をチェックするという方法だ。

 ここでいうキーワードは二つあり、海外ドラマがどのチャンネルで放送されていたのかということと、どの動画配信サービスで流されていたのかということである。本書では作品の刺激度や中毒性から著者が独自に振り分けた図表も掲載されているが、特に、かねてより多チャンネル化が進んでいたアメリカでは視聴者やユーザーの嗜好を日本以上に、各メディアが事細かに分析しているという。

 そして、何となく選んだあとは“とりあえず試しに見てみる”ところから始めるのがよい。著者は「とにかく第1話を見まくろう」と提案するが、その背景には、世界をマーケットにする海外ドラマならではの事情がある。

 売れればシーズンが次から次へと続き、売れなければ伏線が残されていてもそこでおしまいというのが海外ドラマのシビアな特徴だが、各ドラマの第1話は海外の放送局に対して売り込むための試金石となる。そのため製作側も力を込めたものが多く、昨今は第1話のみの無料放送も多いためまずは“見てみる”というのが第一歩となる。

 さらに、義務感に駆られる必要もなく「途中で見るのをやめてもいい」と著者はそっと背中を押す。当然ながら、作品との出会いもあれば別れもある。いったんやめてから面白いと評判が上がったなら、もう一度振り返ってみればよいのだ。

 さて、この春からも様々な海外ドラマがスタートする。本書を通してその魅力をぜひ味わってもらいたいのだが、シーズンが長く続く作品やスピンオフもたくさんある海外ドラマは、いったん見始めると寝不足になりがち。そのため自分自身のペースで、一人でも多くの人が楽しめるようになればと願う。

文=カネコシュウヘイ