誰にでも才能はある! 成功する人に備わる「やり抜く力」―身につけたパターンとその方法とは?

ビジネス

公開日:2017/4/11

『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース:著、神崎朗子:訳/ダイヤモンド社)

 一流アスリートが成功した秘けつを語るとき、よく聞かれるのが「メンタル」。精神力のことだが、熱い気持ちを持って困難に立ち向かう力を指している。すばらしい選手だから、「メンタル」も強いのだろうと考えがちだが、そうではないようだ。

 この「メンタル」に当たるのが、「やり抜く力」。書籍『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース:著、神崎朗子:訳/ダイヤモンド社)を読むと、その“秘けつ”が数多くの実例で示されている。何も一部の限られた「天才」の軌跡ではない。ごく小さな「努力」の積み重ねで、凡人でも何かを成し遂げることができると勇気づけられる。

 著者はペンシルベニア大学心理学部教授。膨大なアンケートやインタビューをはじめとする、サンプルとデータから研究を深め、アメリカではノーベル賞に匹敵するといわれる「マッカーサー賞」を受賞した。これにより、どの分野の人であろうと、大人にも子どもにも「やり抜く力」は身につけられると示し、今や世界中の人からアドバイスを求められている。

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■「2倍の才能」より「1/2の努力」。スキルを磨き、「やり抜く」ことの重要性

私の計算がほぼ正しければ、才能が人の2倍あっても人の半分しか努力しない人は、たとえスキルの面では互角であろうと、長期間の成果を比較した場合には、努力家タイプの人に圧倒的な差をつけられてしまうだろう。

 科学的にやり抜く力の効果を証明した著者は付け加える。

努力をしなければ、たとえ才能があっても宝の持ち腐れ。
努力をしなければ、もっと上達するはずのスキルもそこで頭打ち。
努力によって初めて才能はスキルになり、努力によってスキルが生かされ、さまざまなものを生み出すことができる。

 誰にでも才能はある。生まれながらの差はあれど、コツコツと努力をすれば補って余りある成果が得られるはず。自分には才能がないからと物事を諦めることは、努力をしない言い訳にすぎないと著者は一刀両断する。

 スキルを磨き、成果を出すには絶え間ない努力が不可欠だが、やみくもでもいけない。失敗や困難に見舞われようが、「やり抜く」人はここぞの重要な場面で堪えているのだという。

 豊富な理論と実例で解き明かされるだけでなく、読み手も簡単なテストが実践できるため、自分を分析しながら、「やり抜く力」への向上心がくすぐられていく。

■心を傾ける「何か」が見つからないのはよくあること。まず一歩を踏み出す

 そもそもスキルを磨きあげる対象を見出すことに苦しんでいる人もいるかもしれない。そんな人も、まずは何かをはじめてみるといい。

本当に好きな仕事に打ち込んでいる人を見ると、うらやましくなってしまうことがあるかもしれない。だが、そもそもそういう人は、出発点からして自分とはちがうのだろう、などと思うべきではない。そういう人も、一生をかけてやりたいものが見つかるまでには、かなりの時間がかかった場合が多い。

 そう述べ、料理研究家のジュリア・チャイルドが、「料理」という本当に好きなものを見つけるまで40年かかったエピソードを紹介する。自分を見限ったり、卑下したりせず、楽天的に捉えることも大事なのだ。

 高い山を登ったときに達成感が満たされるように、「やり抜く力」で人生を切り開くと幸福感も増すようだ。「やり抜く力」を子どもに育めば、将来がますます楽しみになりそうだし、人生の満足度がアップするなら、大人だって身につけておきたい。

 成功者にならなくとも、長い人生は山あり谷あり。調査によると、大人は年上ほど「やり抜く力」が強く、20代はもっとも弱いという。年だからと諦めるのもやめよう。そういうことなら、年を重ねるほどに人生が楽しくなるはずだから。

文=松山ようこ