藤原竜也が平凡なサラリーマンに! 放送間近、湊かなえ原作ドラマ『リバース』の見どころ

エンタメ

2017/4/13

『リバース(講談社文庫)』(湊かなえ/講談社)

 『夜行観覧車』『Nのために』の製作陣の手で、新たに実写ドラマ化される湊かなえの小説『リバース』(講談社)。著者の長編小説では初の男性主人公となり、主演をつとめるのは藤原竜也。ほかにも戸田恵梨香、小池徹平、市原隼人、玉森裕太(Kis-My-Ft2)といった豪華キャストぞろいで話題を呼んでいるが、原作ファンとしてはこれまで以上にその演出が気になるところ。というのも、本作は最後の一行で息を呑むことまちがいなしの、叙述ミステリーなのだ。

 藤原竜也といえば、近年、“クズ”役のオファーが著しいことで知られているが、本作の主人公・深瀬和久はいたって平凡なサラリーマン。コーヒーを淹れるのが人より上手ということを除けば、むしろ存在感が薄い部類の人間だが、会社帰りに毎日通うコーヒー豆専門店で出会った美穂子との仲も順調で、ささやかな幸せをかみしめていた。ところがある日、彼女のもとに一通の告発文が届く。いわく「深瀬和久は人殺しだ」。思い当たるのはひとつだけ。

 大学卒業間近のころ、ゼミ仲間5人での旅行中に起きた親友・広沢の死だった。その死に関与していたことを、深瀬をふくむ仲間たちはみな隠匿し続けてきた。それなのに10年を経て起きた、最悪のタイミングで、最悪の相手への暴露。さらにほかの仲間3人も同様の――むしろ深瀬以上のダメージを伴う告発を受けていると知る。誰が、今さら何のために? 告発者を探るうち、深瀬は自分でも思いもよらなかった広沢の死の真相にたどりつくこととなる。

 深瀬にとって広沢は、人生で初めての親友だった。友達を5人あげろと言われればそのうちの一人にはなれるかもしれないが、一人だけと言われればきっと誰にも選ばれない。そんな空虚さから救い出してくれた広沢を、深瀬は結果的に死なせてしまった。だが深瀬は、自分が殺したわけではない、と思っている。事態を防げなかった罪はあれど、直接的に手を下したわけではないのだから罪は軽いはずだ、と。その場合、対価として課せられる罰は果たしてどれくらい重いものであるべきなのだろうか。知らないうちに誰かを深く傷つけた経験は誰にでもあるだろう。めぐりめぐってそれが誰かを死に追いやる遠因となることもある。そのすべては罰せられなくてはならないものなのか。

 自分だけは加害者ではなかったと思い込もうとする深瀬に、けれど菜穂子は突きつける。「だったらなぜこれまで口を閉ざしてきたのか」と。それこそが罪の証ではないのかと。

 深瀬はせめてもの贖罪として、広沢がどんな人生を生きてきたのかを知ろうとする。自分と広沢、二人の過去を遡るうちに見えてくる真実は、今ある現実――深瀬の目に見えている真実をことごとくひっくりかえしていく。そして最後の最後に反転するその現実に、読者は強く打ちのめされてしまうのだ。

 誰が悪かったのか。なにが罪だったのか。真実を明かされたあとも深く考えさせられてしまう本作。ドラマではより登場人物の範囲を広げて展開するため、より事態は混迷していくと思われるが、読者を裏切り続ける湊かなえイズムと人間ドラマとしての重厚さを損なうことなく映像化されることを期待したい。

文=立花もも