「僕はなんにもできなくて、藤森は何をやっても全部うまくて…」 オリラジ・中田敦彦が語る、悩み解決の法則【インタビュー後編】

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更新日:2017/6/5

【前編】「やる気が出ない」「目標が見つからない」の悩みには必ず原因がある! 『大合格』オリラジ・中田敦彦の悩み解決の法則

――自分が10代だった頃と今の高校生を比べて、時代の違いを感じることはありますか。

中田 僕より上の世代に多い「男っちゅうもんはこうせなあかん!」みたいな価値観は、今の若い人たちにはないですよね。りゅうちぇるのような存在も今は普通ですし。男が家庭と仕事を両立させるのも当たり前で、先輩たちのように「結婚なんかしたらつまらん芸人になるで」なんていう考え方は、僕たちの世代からするともう古い。

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 何を幸福と思うかも時代の周期があって、僕の「成功や勝利や大合格をめざせ!」という考え方は、ある一定の時代感覚だと思っています。僕は結構、パワーマインドなんですよ。その対極にいるのが「にんげんだもの」の相田みつをさんです。人間だからできなくていいじゃんっていうのではなく、自分を完璧な人間だと思うことでより高みを目指そうというのが僕の思考法なんです。

『大合格 参考書じゃなくオレに聞け!』(中田敦彦/KADOKAWA)

 今の時代は、バブル世代がダサいと思っている若い人も多いですよね。なにあの札束で戦うような拝金主義のイケイケな人たちは?って。もっとスローライフでミニマルに生きようよっていうノリが今はかっこいい。でも一方で、『大合格』のような本も売れているわけです。

 そういう風に考えると、僕と相方の(藤森)慎吾は、二人ともパワーマインドなんだと思います。相方はチャラ男で、いつも「いいねぇ、イェーイ!」みたいなノリだし、僕は自分を「パーフェクトヒューマンだ! 大合格だ!」とか言ってますから。でも基本は、人に喜んでもらえる仕事ができればいいと思ってずっとやってきたわけです。どっちがボケともツッコミともつかず、でも強気で派手でノリがいいっていう。おもろいか、おもろくないかってことじゃなくて、もっと大衆的なパワーマインドを提供している感覚ですね。時代が一周してそういうサイクルに入っているようにも感じます。

――面白いですね。ところで、中田さんご自身は高校時代どんなことで一番悩みましたか。

中田 コミュニケーションとか恋愛です。高校時代は友だちがいなくて、放課後に遊んだ経験がありませんから。大学に入って相方と出会ってはじめて、カラオケとかボウリングとかビリヤードをしたんです。でも僕はなんにもできなくて、相方は何をやっても全部うまくて。相方は車やファッションも好きで、僕はなんにも知らなかった。高校時代は、勉強するかお笑いのテレビ見るか、そのどっちかしかしてませんでしたから。でも相方は相方で、何でもできるけど何も深められてないのが悩みだったらしくて、僕と出会って「なにこの同じことだけずっと続けている奴は?」と思ったみたいで。それでお互い興味を持って刺激し合える関係になったんですよね。

――孤独な高校時代に、なぜ勉強に励もうと思ったのでしょうか。

中田 彼女ほしいとか、もっと派手に遊びたいとか思っても、解決方法がわからなかったので、得意なことをやるしかなかったんです。それが勉強でした。自分にとってのアドバンテージは勉強で勝つことだと思って、必死で勉強した時期がありましたね。でもやっているうちに上限が見えてきて、「あれ? オレここまでしかいけないのか。どうしようヤバい」と気づいてお笑いにいった(笑)。でもあの頃、猛勉強した経験は今でも自分の糧になっています。

――中田さんが実践した勉強方法のコツは?

中田 よく「一日何時間勉強していましたか?」とか「究極の暗記方法を教えてください」とか相談されるんですが、勉強量は必ずしも勉強の質と比例しませんし、自分に合う勉強法なんて人それぞれ。勉強に王道はありませんから。そのうえで今振り返ってみても、僕は当時から合理主義で効率的で客観的だったなと思います。要するに、関係書籍をひととおり読んで、一番楽に勉強して一番評価の高い大学に入るにはどうすればいいかをまず研究したんです。そして教科ごとにこれはと思う方法を実践してみて、効率が悪ければ次の方法を試してみる。その繰り返しで自分に合う効率的な勉強方法を確立していきました。

 努力する前に努力の仕方を研究する。これが僕のやり方で、方法論を構築することに関しては、ただ勉強ができるだけの人よりもできる自信があります。

 悩み相談では方法論がわからなくて悩んでいる人も多いんですけど、方法論を探す入り口で、こうするしかないとか、これはできないとか思っているとドツボにはまります。たとえばクイズ番組に出るタレントさんがハマりがちなのは、大量に本を買うこと。そんなこと無駄でしかないから「なんでその本買ったの?」と聞くと、「読むと頭よくなりそうだから」と。「どのクイズ番組に出たいの?」と聞くと『Qさま!!』って言うんですけど、『Qさま!!』では出ない数学や物理の本まで買っているわけです。そんな本いらないから、まず『Qさま!!』を徹底的に研究しようよ、ということなんですね。過去に出た問題を研究すれば、傾向と対策が見えてくるはずですから。

――確かに。ただ漠然と思いついたことをやるほど無駄なことはないんですね。最後に、志望校合格や、就職活動の成功など、目標を達成したあとのモチベーションの保ち方について、ぜひアドバイスをお願いします。

中田 夢や目標って、実現すると飽きてくるんですよ。僕もお笑い芸人になりたくてなったけど、なんか飽きてきて、歌やりたくて念願の紅白歌合戦にも出たんですけど、そのあと歌以外のやりたいことも見つかってきたんです。同じラインで新たな夢を探すのってなかなか難しい。でも違うステージに目を向けると、いくらでも楽しいことは見つかります。

 ちなみに僕は今、めちゃくちゃ金を稼いでみたいと思ってるんです。これまでは、いやいや金じゃないから、人に喜んでもらって評価されることが大事だからと思ってやってきたんですよね。でも子どもが2人になって、子育ても倍忙しくなっているので、嫁にプレッシャーかけられたんですよ。「仕事を半分に減らして」って。「え、じゃあ今の暮らしできなくなるよ」って言ったら「半分の仕事量で倍稼げばいいんじゃない?」って。最初は無理と思ったんですけど、本当に不可能かな?とやる気が出てきて、それを実現するためにはどうすればいいか研究しているところです。白目剥くほど稼ぎたいというのが、僕の今の夢ですね!(笑)。

 人生って面白いゲームと同じだと思ってるんですよ。金稼いでもいいし、冒険に出てもいいし、何かを育ててもいいゲームがあるじゃないですか。あれと同じだけど、時間がきたら自動的に切れるんです。この人生ゲーム、ボーッとしているだけでもいいんですけど暇で退屈だから、みんな何か面白いことをやりたくなるんですよね。それがひとつとは限らないので、何かに飽きたら別のことをはじめてみると、また次の夢や目標に向かってやる気が湧いてくると思います。

取材・文=樺山美夏 写真=山本哲也