画面で見るだけじゃわからない! 能町みね子が歩く、Googleストリートビュー。路地裏まで歩けば見えてくる、土地の魅力!

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2017/6/28

『ほじくりストリートビュー』(能町みね子/交通新聞社)

 Googleストリートビューといえば、Googleマップ上で指定した道路沿いの風景を360度方向に見渡せるインターネットサービスだ。見ず知らずの土地へ赴く際に道順を下調べしたり、現地の雰囲気を知ったりするのにとても便利だが、時には当初の目的を離れ、単純に風景を楽しむことも少なくない。気の向くままに道路をたどっていると、意外に思う場所を見つけることもあるだろう。「なぜここにこんな建物が?」「この路地はどこへ繋がっている?」などなど──。とはいえ、普通はそんな疑問を抱いても、わざわざ出向いて調べようとは思わない。

 しかし『ほじくりストリートビュー』(能町みね子/交通新聞社)の著者・能町みね子氏は違う。本書は自身がストリートビューで気になった場所へ赴き、そこを「ほじくってみる」一冊。現地の写真とともに添えられた、自ら描き下ろした風景イラストもノンビリとしたタッチで魅力的だ。

 冒頭に挙げられているのは都内渋谷区にある千駄ヶ谷6丁目。ここにはかの新宿御苑が広がっているのだが、マップで見るとそこに僅かながら住宅地が5丁目からはみ出してきているように見えるのだ。小生も気になってストリートビューで覗いてみたら、確かに御苑千駄ヶ谷門から西へ進んだ場所に民家が並んでいた。千駄ヶ谷門方向の端にある一番大きな家は道路に面した門から、現在居住中であることがうかがえるが、そこから西はブロック塀に囲われており中の様子はわからない。

 場所柄、高級住宅地を思い浮かべるかもしれないが、シンプルながらも小洒落た感じの平屋が数軒並んでいるのが見えるだけだ。西端にも門があるが、部外者が入れる雰囲気ではない。著者も現地では何もわからなかったという。しかし帰宅後に改めて調べたところ、どうやらそこは環境省の宿舎らしい。御苑の管理に携わる職員用住宅ということだろう。

 このような調子で街歩きが綴られている本書。実は小生も知っている場所が掲載されており、この目で確かめたくなった。場所は神奈川県横浜市神奈川区にある京急線子安駅から伸びる、線路に挟まれた細い住宅街の路地。知っているとは言ったものの実際にそこへ降りたことはなく、ただ電車の車窓から「こんな場所でも住宅地は成り立つんだな」と気になっていたのだ。

 いざ駅から出てみると、想像よりも更に狭く感じた。西側をJR京浜東北線、東海道線、横須賀線、東側を京急本線に囲まれた中洲のような細長い住宅地で、駅前にこそ蕎麦屋があるものの、これでは他に商店も建てられないだろう。しかし、JR線を地下道で抜ければ、その先に商店街「大口1番街」が伸びている。東は踏切を渡ればすぐに住宅地が広がり、第一京浜とも呼ばれる国道15号線も近く、決して不便な立地ではないが、朝から晩まで電車が行き交うだけに、騒音や振動など大変そうである。

 ともあれ、駅から北へ線路沿いに伸びる路地を歩いてみた。そこには特に何かある訳でもなく、生活感あふれる路地と一般住宅が並ぶだけで、当然ながら商店など見受けられなかった。しばらく歩くと路地の真ん中に電柱が立っており、本書で予習したとおりにその奥は行きどまりだった。なんてこともない路地とも思えるが、マンションが並ぶ国道沿いと比べるとまるで異次元にも感じる。

 やはり、マップ上で見るのと実際に現地を歩くのでは違うものだ。ストリートビューもかなり縦横無尽に現地を覗けるのだが、それでも細い路地などには入り込めないし、なにより自分の見たい視点に手が届かない歯がゆさもある。自身の目でじっくりと眺めてみれば、画面で見るのとは全く違う次元の満足感が味わえるだろう。ただし、くれぐれも周辺住民に迷惑を掛けぬよう、静かに路地散策を楽しんでほしい。

文=犬山しんのすけ