ネットを騒然とさせた衝撃のエピソードを収録。『ど根性ガエルの娘』3巻は、胸を抉る会心作だった!

アニメ・マンガ

2017/6/29

『ど根性ガエルの娘』(大月悠祐子/白泉社)

 タイトルからは決して想像もつかない衝撃的な内容が話題を集めている『ど根性ガエルの娘』(大月悠祐子/白泉社)。現在、無料WEBコミックマガジン「ヤングアニマル Densi」で連載中の本作、待望の第3巻が6月29日(木)に発売された。本作は、国民的ギャグマンガ『ど根性ガエル』の作者である吉沢やすみの娘・大月悠祐子が、実際に起こった家族のエピソードを回想しつつまとめた一作だ。

 国民的マンガ家とその家族の半生。ギャグマンガ家の人生というと、なんとなく賑やかで笑えるようなものを想像するかもしれない。しかし、本作は決してそんな内容ではない。むしろ、その逆。大月が置かれた環境はあまりにも過酷で、何度もページをめくる手が止まってしまうほどだった。

 大月の父親、吉沢やすみは偉大なマンガ家だ。デビュー作である『ど根性ガエル』が大ヒットを記録し、若くして国民的な作家となった。しかし、それは彼の“光の部分”でしかない。光があれば陰もある。そう、本作はその“陰の部分”に焦点を当てているのである。

 吉沢やすみの陰とはなにか。誤解を恐れずに言うならば、“破綻した人間性”だ。『ど根性ガエル』の連載終了後、彼はスランプに陥ってしまう。そして、そんな現実から逃げるようにギャンブルへと没頭していく。13本もの原稿を落とし、そのまま失踪。世捨て人のような生活を送り、ようやく家に帰ってきた頃には「作家」としての吉沢は死んでいたのだ。

 それだけではない。彼の焦りやストレス、葛藤はそのまま家族へとぶつけられる。家の壁に穴をあけ、家族を怒鳴りつけ、子どもの財布から金を盗み取る。そこにはもはや、父親の面影はない。大月は幼い頃から、父親とは呼べないような人物に苦しんできたのだ。また、その影響からか気丈な母親も次第におかしくなっていく。父親に財布を盗られたと訴える大月を前にして、「あんたが家族を不幸にする」と吐き捨てるのだ。

 そして、第3巻にはネットを騒然とさせたエピソード、第15話が収録されている。ある人物が土下座を強要されるシーンは、読んでいて非常に胸が痛くなった。どうしてこんなことになってしまうのか、涙が止まらなかった。

 家族のことを赤裸々に描く。それは並大抵の覚悟ではないだろう。しかも、そのどれもがつらく目を背けたくなってしまうものばかり。それでも大月はなぜ筆を執るのか。それは、前に進むためではないだろうか。作家として生きていくために、描かなければいけないものがある。だから、父親がしでかしてきたいくつもの失態をありのまま描き、自身に起こったことを直視しているのだ。

 さらに、第3巻のラストエピソードである第18話では、大月がどうして本作を描くことにこだわっているのか、その真意を垣間見ることができる。それを理解し、第1話から読み直すと目の前にはまた違った風景が広がる。

 家族を崩壊へと追いやった父親とその娘。奇しくもそんな父親と同じ職業を選んだ娘が描く家族の物語は、今後もまだまだ続いていく。少し気が早いが、大月が最終回で出す結論はどんなものなのか、それを見届けるまではマンガ読みはやめられないと思った。

文=五十嵐 大

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