マーガリンの競合相手はバターではない!? イノベーションの権威が解き明かす「人がモノを買う行為のメカニズム」

ビジネス

更新日:2017/8/21

 世界で最も影響力のある経営学者が、人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』が2017年8月1日(火)に発売された。

 一度はヒット商品が出たものの、その後は泣かず飛ばず。何とかして次のヒットを生み出さねば… というプレッシャーに苦しんでいる企業は多いのではないだろうか。同書はそんな運任せのマーケティングを変える、画期的なマーケティング指南書となっている。

 イノベーションの成否を分けるのは、「この層はあの層と類似性が高い」「顧客の68%が商品Bより商品Aを好む」といった顧客データではない。鍵となるのは「顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)」。データは顧客が「誰か」を教えてくれても「なぜ」買うのかは教えてくれない。そのため、数値化できない「因果関係」にこそ注目する必要がある。同書では「顧客が欲しがるモノ・コトとは?」を知る方法論が解説されているため、商品の差別化に悩む多くの企業にとって必携のバイブルとなるはず。

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 具体的な事例としてイケアやゼネラルモーターズ(GM)、Amazonなども登場。付加価値の高い商品・サービスの企画方法や顧客の記憶に残るブランドの構築法、潜在的なニーズを発見する視点やマーケットデータに振り回されないマーケティング戦略などを解説していく。

従来型マーケティングの誤り
誤:アンケート上の顧客の属性(年齢や性別、年収)が、商品購入と関係があるものだと思い込んでしまう。
正:アンケートデータは、顧客がなぜその商品を買うのかという“因果関係”を明らかにはしてくれない。顧客が置かれている状況を理解することが売上アップのヒントになる。

誤:人はより良い製品を買う。
正:顧客は自分がやりたいことをするために製品を購入する。商品を売りたければ、製品のスペックではなく顧客がやりたいこと=“ジョブ”に注目するべき。

誤:製品の機能こそが差別化の源泉である。
正:顧客は製品から感情的・社会的な満足を得たいことが多い。製品の機能ではなく、いかに顧客の感情を理解できているかが他社との勝敗を分ける。

 予測可能で優れたイノベーションの創り方が掲載されている同書。人がモノを買う仕組みを理解し、マーケティングを成功させたい人はぜひ読んでみてほしい。

Clayton M. Christensen(クレイトン・M・クリステンセン)
ハーバード・ビジネス・スクールのキム・B・クラーク記念講座教授。9冊の書籍を執筆し、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の年間最優秀記事に贈られるマッキンゼー賞を5回受賞。イノベーションに特化した経営コンサルタント会社イノサイトを含む、4つの会社の共同創業者でもある。「最も影響力のある経営思想家トップ50」(Thinkers50、隔年選出)の2011年と2013年の1位に選出。

※掲載内容は変更になる場合があります。