共感の声続出! 現役医師が描く「リハビリテーション病院」が舞台の医療小説が登場!

文芸・カルチャー

2017/8/2

『ナースコール!――こちら蓮田市リハビリテーション病院――』(川上途行/ポプラ社)

 「リハビリには興味ないから、この小説は面白く読めないんじゃないかな?」と思った方、安心してください。

『ナースコール!――こちら蓮田市リハビリテーション病院――』(川上途行/ポプラ社)は、リハビリテーション病院で働く若き看護師が主人公の、手軽に読める医療小説だ。

「その設定、すごく興味ある!!」という方は少ないかもしれないが、「どうして今までリハビリ病院を舞台にした小説がなかったんだろう?」と思うくらい、人間ドラマに溢れた一冊だった。

現役ナースの方々からも、続々と感想が寄せられている。

「お前の価値観を満たすために、患者さんがいるわけじゃないだろ」というセリフが印象的でした。40代、東京都内大学病院勤務

きれいごと抜きで一人の人間としてこの仕事にどう向き合っていくか、そういう主人公の葛藤にとても共感しました。30代、神奈川県リハビリ病院勤務

患者さんの病気だけでなく、生活まるごとをみていくリハビリという視点は、他の医療現場にも通じると思いました20代、埼玉県一般病院勤務

以前、リハビリ病院に勤めていましたが、看護ケアがうまくいって患者さんが良くなった時にすごく嬉しかったのを思い出しました30代、東京都内一般病院勤務

「自分の手で治す」、読みおわった後に気づけば自分の手を改めて見ていました。20代、東京都内リハビリ病院勤務

 埼玉県のリハビリテーション病院で働く、看護師2年目の玲子(れいこ)は、「がんばる気力」や「努力する意味」を見失いながら働いている。リハビリテーション病院の仕事は、やや特殊だ。「治療している」という実感が薄く、「完治」という定義も難しい。玲子はやりがいを見出せずにいた。

 そんなある日、新しく赴任してきた若き医師、小塚太一(こづか・たいち)に、「リハビリってどんな意味?」という質問をされ、しっかりと答えられなかったことに玲子はショックを受ける。以降、不愛想で淡々としながらも、「リハビリ」に強い情熱を持っている小塚に触発され、玲子は「リハビリの本当の意味」を模索し、行動を起こす。

 深夜にナースコールを何度も鳴らす、脳出血の後遺症で左半身に麻痺が残ってしまった元警察官の男性。嚥下障害があるのに、食べてはいけない物を食べてしまう身寄りのいない男性患者。バイク事故で両足が麻痺してしまい、歩けなくなってしまった30代の女性……、様々な患者と関わることで、玲子は「自分の力と向き合う」大切さや「チームとしての働き方。そして、その中でどうやって自分の力を活かしていくか」を試行錯誤していく。

 たいてい、「医療小説」の舞台は外科が多い。リハビリ病院を扱った小説やテレビ番組を、私は知らない。

 なぜ題材になりづらいかと言うと、単純に「地味だから」だろう。「私、失敗しないので」的な天才外科医もおらず、「生か死か」に直面することもほぼない。劇的な一日ではなく、日々、同じことを繰り返す方が多い。映像で想像した場合、絵面は圧倒的に地味になる。それはその通りだと思うのだが、「圧倒的に共感できる」のは、こちらの方だと思う。

 リハビリ病院には、今まで「普通」だったことを、「普通」にできなくなってしまった人々がやって来る。だからこそ、「葛藤」や「苦悩」といった感情面が、鮮明に描かれることになる。未来を不安に感じたり、努力しても報われないことがあったり、現状が思い通りにならなくて苦しむことは、リハビリをしている方々だけではなく、多くの読者が自分の境遇と重ねることができるのではないだろうか。

 それに加えて、玲子の「仕事に対する葛藤」にも感情移入ができる。だから、この特殊な舞台の物語を、とても身近に、共感を持って読むことができるのだ。

 最初から頑張りたくないって思っている人はいないんだと思うんです。心臓が動いているリズムに合わせて、少しでも頑張りたいって思っていると思うんです。時にはその思いが重荷になるくらいに。

 これは、何度もリハビリの失敗を繰り返す患者のことを、玲子が小塚に語る一場面だが、玲子は、自分の心情を重ねている。

 「がんばりたい」という気持ちが重荷になり、やる気をなくしてしまったのは玲子自身だ。けれど、「自分に無理なこと」や「実力以上のこと」を過度に期待するのではなく、「自分の心臓のリズムに合わせて」がんばっていけばいいと、玲子がうったえるシーン。私は勇気をもらえたような気がする。

文=雨野裾