ある野球漫画が迎えた唐突な「最終回」に、ネット騒然……

マンガ

更新日:2017/8/29

『セーラーエース(6)』(しげの秀一/講談社)

 第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプが、かつて出演していたテレビ番組で決め台詞としていたのが「You’re fired!(お前はクビだ!)」である。この場合のクビとは一般的には「解雇」を指し、会社員など被雇用者にとっては死刑宣告に等しい。およその職種に「クビ=解雇」は存在するだろうが、漫画家の場合はといえば少々異なる。そう、漫画家にとってクビに当たる言葉とは、ズバリ「打ち切り」だ。

 一般的な「打ち切り」のイメージは「人気のない作品に対して編集者が漫画家に『強制終了』を通達する」というものだろう。しかしひとことに「打ち切り」といっても、そのパターンや実情はさまざまに存在するのである。そして最近、その唐突な「最終回」にネットなどを騒然とさせた作品がある。それがしげの秀一の『セーラーエース』である。

 作者・しげの秀一氏といえば、テレビアニメがヒットし劇場版も製作された『頭文字(イニシャル)D』などの人気作で有名な漫画家。そんな氏が『週刊ヤングマガジン』で連載していたのが本作だ。ストーリーは、一時期、野球から離れていた主人公の桜木繭(まゆ)が、関東女学院野球部にエースとして復帰し、チームを勝利へ導いていくというもの。まゆを中心に熱い戦いを繰り広げるチームが丁寧に描かれ、コミックスも5巻までが出ていたのだが、6月に発売された最新刊『セーラーエース(6)』(講談社)で衝撃の展開が! なんと強敵・青山インターコンチネンタルハイスクールとの対戦で、相手のエースが試合に登板しようと準備を始め、ファンのオヤジの「大会屈指の好投手どうしのガチンコが見れるぞい」というセリフを最後に、物語は終了してしまったのだ。

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 この最終話を受け「作者が飽きた」「編集による唐突な打ち切り」など、ネット上ではさまざまな説が囁かれたが、もちろん何が真実かは一切公表されていない。ただ、手がかりとなるものは存在する。それは問題の最終話が掲載された『週刊ヤングマガジン』2017年18号、終了直後のカラーページで「新たなる伝説──。」として、氏による新連載が今夏開始と告知されていたことだ。もちろんこれをもって作家主導か、編集主導か判断するには材料が少なすぎるが、これほど中途半端なところで最終回としたことは、もしかしたら作者のモチベーションが多少なりとも影響しているのかもしれない。

 そう考える理由のひとつは、似たような終わりかたを迎えた漫画があったからだ。それは『週刊少年マガジン』で連載されていた『VECTOR BALL』である。この漫画の作者・雷句誠氏もアニメ化された『金色のガッシュ!!』などで知られる人気作家だが、やはり同誌2017年16号で登場キャラクターが敵を倒したあと「カニ味だ!!!」というセリフを最後に「第一部完結」となった。実はこの終了に関しては、理由がハッキリしている。なぜなら作者が自らのブログで、事の顛末を記しているからだ。簡単にいえば「人気がなくて編集からテコ入れの提案が出たが、その内容では描くことができないと思い終了を願い出た」ということである。そしてこの絶望的な状況に氏の心が折れてしまい、打ち切りなりのラストをまとめることもできずに終了したという。もちろん作家によって対応はそれぞれだろうが、一連の騒動における雷句氏の心の動きは、漫画家のモチベーションを考える上で、参考にはなるだろう。

 打ち切りは作家にとっても読者にとっても残念な結果に違いないが、作品が商業誌掲載である以上、やむを得ないことでもある。漫画の続きを楽しみにしていた人はさぞかしガッカリしているだろうが、まだ希望がないわけではない。例えばかつて打ち切りとなった作品が、なんと30年後に復活連載を遂げたケースもあるのだ。もちろん作者のやる気しだいではあるが、復活の可能性を信じて待ってみるのもいいかもしれない。

文=木谷誠