約100ページの大ボリューム!「本屋って、やっぱり面白い」と気づかされる『POPEYE』の本屋大特集

暮らし

更新日:2017/8/15

8/9発売『POPEYE』9月号(マガジンハウス)

 街から本屋が消えている――。

 近年よく目にする話だ。街の取材をしていても、「この駅周辺には本屋が1軒もないんですよ」と聞くことも実際に増えてきた。

 また、この話には、「だから街の本屋を守ろう!」という呼びかけがセットで付いてくる。だが人は、自分が「楽しい!」と思うことしか続けられない。義務として書店通いを要求されても、数回でやめてしまうだろう。

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「本屋って、やっぱりいいよなぁ……」
「何だか久しぶりに本屋に行きたくなってきた」

 そんな感覚を多くの人が持つことが、街の本屋の存続に何より役立つはず。『POPEYE』9月号の「君の街から、本屋が消えたら大変だ!」は、そんな本屋の楽しさに、もう一度気づかせてくれる本屋特集だ。

掲載されている本屋は『POPEYE』ならでは!

 特集は100ページ近い大ボリューム。荻窪の「Title」のような新鋭の新刊書店から、吉原の遊廓専門書店「カストリ書房」をはじめとした超個性派の書店、さらには「COW BOOKS」「古書 音羽館」といった本好きには定番のお店まで、ありとあらゆる面白い書店が、ありとあらゆる切り口で紹介されている。紹介する店が都内を超えて尾道、高松、ニューヨーク、そしてブエノスアイレスまで広がっていくのは『POPEYE』ならではだ。

 巻頭の「僕の好きな本屋」という21人の著名人が好きな書店を紹介する企画では、又吉直樹も登場。家賃3万円の三鷹のアパートに住み、知らない人にメシをおごってもらって生きていた頃。それでも古本屋めぐりをして月10冊は本を買っていて、そんなときに吉祥寺の古書店「百年」を見つけた……というインタビューが掲載されている。

 この企画では、ほかにもきゃりーぱみゅぱみゅが「ヴィレッジヴァンガード下北沢店」を勧めていて、「らしすぎる!!」と納得しながら読んでしまった。人の好きな本屋の話を読む……という経験は、はじめて入った友達の家の本棚を眺めるような面白さがあった。

いいデザインの「ブックカバー」に出会う楽しさがある!

 ほかに面白かったのは、書店のブックカバーを取り上げた企画。何度となく見ていたジュンク堂書店のカバーが、神戸出身の明治生まれの画家の絵だと初めて分かったり、紀伊國屋書店新宿本店のブックカバーの “落ち着き”が的確に分析されていたりと、新発見も唸ることも多かった。

 なお、この企画のリード文には、「カバー欲しさに書店に行くことだってある」と書いてあったが、往来堂書店のミロコマチコさんが手掛けるカバーは、ホントに買いに行きたくなる素敵さ。近々行ってみます!

選者は14人! ひと夏のブックショップ『ポパイ』開店!

 また、『POPEYE』連載陣のみうらじゅん、大久保佳代子から、吉田豪、宇多丸まで14人の選者を迎え、それぞれが5冊の本をセレクトする「ひと夏のブックショップ『ポパイ』開店!」という企画も。大久保佳代子は恋愛をテーマに、向田邦子『隣りの女』と杉作J太郎『恋と股間』が並べる物凄いチョイス。自分の弱さも欲望も正直に吐露する選評からも、人柄の魅力が溢れ出ていた。

日々、本に囲まれている店主だって足繁く通う本屋がある!

 そのほか、本屋の店主やスタッフが他の書店をオススメする「本屋の好きな本屋さん」という企画や、本屋と一緒に中華料理屋やラーメン屋まで紹介してしまう神保町特集など、企画の切り口がいちいち面白い。「本屋って面白いなぁ」と思うと同時に、「雑誌って面白いなぁ」とも思える特集なのだ。

 なお筆者は、『ホール・アース・カタログ』全号を揃えた江戸川橋の「CATALOG&BOOKs」に猛烈に惹かれた。本特集を担当した『POPEYE』編集部のYさんは、「本屋の好きな本屋」で取材したお店が特に印象に残っているとのこと。

「『ポパイ』に馴染み深い本屋の店主たちが、人知れず通う本屋がある。『オン・サンデーズ』の草野象さんは東大駒場キャンパス内にある『駒場書籍部』を教えくれた。学生の要望に応えてセレクトすると、こんな棚になるのか! 未知の本屋を訪れ、その濃さと深さを肌で感じる。本屋巡りはやっぱり楽しい」(『POPEYE』編集部 Yさん)

 読み終わって、「何度か行ったことのあったあの本屋、やっぱいいなぁ。また行ってみよう」と思う人もいるだろうし、「何この店!」と驚いた店を覗いてみたくなる人もいるだろう。この夏、本屋の楽しさを再発見してみよう!

文=古澤誠一郎