北海道夕張市の「財政難」が日本各地で起こり始めている…人口減少が続く「縮小ニッポン」のもたらす暗い未来とは?

社会

2017/8/16

『縮小ニッポンの衝撃』(NHKスペシャル取材班/講談社)

 日本が抱える問題の1つとして超高齢社会が挙げられる。2016年に発表された国勢調査によると、我が国の総人口は1億2709万人。5年前の調査と比べて、約96万人が減少した。「人口減少」と言われて久しいが、実は1920年の調査開始以来、国勢調査の歴史上初めての「減少」だった。今回の調査によれば、日本の大都市の1つ、大阪も「人口減少」に転じるなど、全国の8割以上の自治体で人口が減少している。この先、日本の人口推移は目もくらむような「断崖絶壁的減少」が待ち受けている。

 人口が減り続ければ、日本はどうなってしまうのか。その答えかもしれない事態がある自治体ではすでに起こっていた。「財政難」で一時期大変話題になった北海道夕張市だ。その人口比率は40年後の日本の人口比率に酷似しているそうだ。夕張市は今でも「ミッションインポッシブル」と揶揄される過酷な借金返済に追われ、前例のない「住民サービスの切り詰め」を余儀なくされている。夕張市の現状は対岸の火事ではない。40年後の私たちかもしれないのだ。そんな日本の危機的状況を伝えるべく、昨年NHKは「縮小ニッポンの衝撃」を放送した。そしてその放送をもとに書籍化されたのが『縮小ニッポンの衝撃』(NHKスペシャル取材班/講談社)だ。ここで本書よりその内容のごく一部をご紹介したい。

■東京都豊島区の実態

 夕張市の現況も気になるところだが、なにより「他人事」に終わらせないためにも、東京の「未来」をご紹介したい。東京都の人口は1300万人を超え、今も人口は膨れ上がり続けている。地方から若者を吸い上げる「一極集中」が、今後も東京に富をもたらし続けるイメージがわくが、実はそれもアヤシイところ。東京都の人口は2025年にピークを迎え、それ以降は新宿区・世田谷区など、11区で減少が始まるという。なかでも池袋を抱える豊島区は「消滅可能性都市」に挙げられている。

 豊島区は毎年2万人近い人口の流入がある。しかし「豊島区全体の人口」から「流入した分の人口」を除くと、ある事実が浮かび上がる。亡くなった区民(死亡者数)と新たに生まれた区民(出生者数)を比べると、死亡者数の方が多いのだ。これは「自然減」と呼ばれる現象で、他の自治体からの流入がなければ人口は減り続けている事実を表している。しかも豊島区ではこの自然減が25年以上も続いているのだ。

 この流入する人口2万人のうち、最も多い割合を占めるのが「20代の単身世帯」。彼らの平均年収は241万円だそうだ。さらにこうした若者たちは「単身世帯のまま高齢者」になってしまう可能性もはらんでいる。

■人口減少が引き起こす暗い未来

 人口の減少は確実に財政に影響する。かつて地方から流入する若者たちは、生産活動の中心を担うことで、住民税を負担して区の税収を支える存在でもあった。そのおかげで豊島区の財源は他の地方自治体よりゆとりを持つことができた。しかし近年、豊島区に流入する若者の年収は240万円程度。これでは税負担の能力は低い。非正規雇用に従事する人々が増える昨今、この年収が生涯上がらない可能性もある。もし彼らが結婚して子どもを生まなければ、税の担い手である次の世代につなぐこともできない。そして彼らがそのまま高齢者になってしまうと、蓄えが少ない場合は、生活保護や介護・医療など、区の社会保障に頼らざるを得なくなる。地方から流入する頼れる若者が一転、豊島区の負担になる可能性があるのだ。人口が増え続けている豊島区の未来は暗い。

■東京でも仕事は見つからない

 しかしなぜ若者は、たとえ240万円の低年収でも上京するのだろうか。それは「地元に思うような仕事がない」ことが挙げられる。地方の企業のなかには、法律に触れるような低賃金で働かせているところもある。そういった企業を辞め、再就職しようと地元を駆けずり回ったが、思うような職がなく、上京を決断した話が本書でいくつか紹介されている。しかし上京しても「思うような職が見つからない」状況は変わらない。厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、求職者の36%が事務職を求めていたのに対し、それに対する求人は11%しかなかった。一方、飲食や介護職などのサービス業、建設・輸送・保安・清掃業などは人手を求める状況が続いており、ミスマッチが常に起きている。しかも正社員を希望しても、求人では非正規雇用を求めている場合も多い。地元で仕事がない。上京しても仕事がない。なんとか就労しても所得が低い。若者の恋愛離れや晩婚化が叫ばれているが、「したくてもできない」が若者の本音ではないだろうか。

 ここまでご紹介した内容を読んで、読者はどのような感想を抱くだろうか。筆者は本書を読んで、日本が抱える様々な問題が覆い重なり「人口減少」を引き起こしていると感じた。そしてその人口減少が引き起こす未来は、北海道夕張市が迎えた「財政難」、つまり荒廃した街と行政の姿だ。決してそれは他人事ではなく、まさか東京の豊島区が再現しようとしている。いや、豊島区だけではなく、すでに日本各地の自治体で夕張市のような現象が起こりつつある。日本は今、緊急事態なのだ。今すぐ国民が話し合い、恐ろしい未来を回避する方法を一緒に考えなければならない。不倫ネタでタレントを糾弾したり、どっかの大臣の揚げ足を取ったりして騒いでいる場合ではないのだ。人口減少を、日本の抱える様々な問題を解決できなければ、日本に未来はない。

文=いのうえゆきひろ