宝塚歌劇団にハマる「ヅカ男子」が急増中! 阪急電鉄が築いたタカラヅカの100年とは?

社会

2017/9/19

『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡(ポプラ新書)』(中本千晶/ポプラ社)

 ここ数年、タカラヅカ(宝塚歌劇団)にハマる男性、「ヅカ男子」が増えているという。意外なのは、ヅカファン=男性という時代もあったこと。そんなトリビアもちりばめつつ、タカラヅカの伝統と挑戦の系譜を教えてくれるのが『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡(ポプラ新書)』(中本千晶/ポプラ社)だ。

 1914年の初公演以来、今年で103年目にして華やかさ健在なりのタカラヅカ。そのパワーの源泉と人気を衰えさせない強さの秘密を、本書は様々な切り口から探っていく。 著者もそのひとりだと記す「ヅカ・ヲタ」(コアファン)を核に、女性からの支持が約8割を占めるタカラヅカ。だが創成期の頃(1910年代)は男性知識人層がコアファンで、当時の人気は男役ではなく娘役に集まったそうだ。その後1920年代に入り、レビューという演目の黄金期に入ると女性ファンが圧倒し、そのまま現在に至っているという。

 そんなタカラヅカのもっともユニークな特異性、それは運営母体がエンタメ企業ではなく、阪神急行電鉄という鉄道会社だということ。著者はまずその点に着目し、365日どんな天候の日も運行を義務付けられた鉄道会社だからこそ、培うことのできた劇団運営ノウハウや舞台裏を明かしていく。

 他にも、今では屈指の難関校となった宝塚音楽学校と劇団の連携による、「生徒とスター」を共に育成する独自の教育システムや、すべてを貫く「清く正しく美しく」というモットー、演目選出に向けた挑戦、ファンとの関わりなどへと着目し、タカラヅカの強さと魅力を浮き彫りにしていく。

 本書を読んで改めて感じるのは、著者もフォーカスするすべての生みの親、故・小林一三氏の偉大さだ。もし小林氏の「国民劇をつくりたい」という熱い思いがなかったら、タカラヅカのみならず、世界の男性を虜にした黒澤明映画『七人の侍』やゴジラ・シリーズなども世になかったのだ(これらの映画を生んだ東宝は、東京宝塚の略で宝塚歌劇団から生まれた会社である)。

 本書には著者のタカラヅカ愛と共に、小林氏の国民への愛が溢れている──筆者はそう感じた。

文=町田光