モンキー・パンチ氏に捧ぐ「ルパン三世(PART1)」全話放送&貴重な「パイロット・フィルム」大公開!
公開日:2019/6/14
映画を愛する人たちのために、素晴らしき名作の数々をお届けする名画チャンネル「シネフィルWOWOW(BS252ch)」。そのコンテンツのうち、日本が世界に誇るアニメ映画の名作を放送しているのが「世界がふり向くアニメ術」である。本編に加え、研究者の解説やスタッフインタビューも楽しめる人気番組だ。そして6~8月は特別編成として、3カ月連続で「日本アニメ史に残る3大名作」がオンエアされている。
■超名作の誕生
6月の作品は「ルパン三世(PART1)」。1971年に登場した記念すべきTVシリーズの第一作目(全23話)が、6月2日から毎週日曜の20時50分から放送されている。また、ニュースでも取り上げられたのでご存じの方も多いと思うが、2019年4月11日に原作者であるモンキー・パンチ氏が逝去されており、この放送はその追悼としての意味も込められている。



では、『ルパン三世』を生み出したモンキー・パンチ氏とはどのような人物だったのか。実は、若き日の氏を知るにはうってつけの漫画が存在する。それが『ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』(吉本浩二/双葉社)だ。

この作品は『ルパン三世』が連載されていた雑誌『漫画アクション』の誕生秘話を描いたノンフィクションコミック。双葉社で漫画雑誌の編集長を務める清水文人氏が、加藤一彦(後のモンキー・パンチ)氏と出会い、新たな時代を切り拓く漫画雑誌を作り上げていくさまが、時に楽しく、時に切なく、非常にドラマティックに描かれている。
モンキー・パンチ氏といえば峰不二子のような女性の絵も思い浮かぶが、昔の氏は女性を描くのが苦手で、デッサン学校で勉強していたというエピソードにはビックリ。さらに「モンキー・パンチ」というペンネームは清水文人編集長が名付けたものであり、当初本人はとてもイヤがっていたという話など、氏と『ルパン三世』のルーツを知ることができる興味深い秘話が満載なのだ。

そして今回、『ルーザーズ』の作者である吉本浩二氏から、モンキー・パンチ氏への追悼メッセージが寄せられたので、ここに紹介しておこう。
あれは2年ほど前、モンキー・パンチ先生のご自宅に取材で伺った時でした。
「明日までポスター描かなきゃいけないんだけどさ、何か良いアイデアない?」
モンキー先生は頭をかきながら、少し困ったように、そして、とても嬉しそうに、そうおっしゃってました。
80歳になっても“絵”のことを考えるのが楽しくてしょうがない……そのお姿を見られたのは、漫画家の僕にとって一生の宝物です。
モンキー・パンチ先生は若輩者の僕らに対しても、優しく、丁寧に、朴訥と、いろんなお話をされました。
いつも目線は僕らの頭上、少し上の方……ゆったり空を眺めている感じで、新たな未知なるものをたえず想像されていたのだと思います。吉本浩二
■見逃せないレア映像
「世界がふり向くアニメ術」では「ルパン三世(PART1)」の本編放送のほか、オールドファンも納得の特別企画が用意されている。
まずアニメ・特撮研究家である氷川竜介氏による作品解説と、「ルパン三世(PART1)」初期エピソードの演出を担当した大隅正秋(現:おおすみ正秋)氏へのインタビュー。数多くのアニメに精通した氷川氏と、最初期のルパンを知る大隅氏の生の声は、作品を鑑賞する上で大いに役立つはずだ。
そして最大の目玉として、「ルパン三世 パイロット・フィルム」の放送である。「パイロット・フィルム」というのは、映画配給会社やテレビ局といったクライアントに対し、作品の内容や方向性などをプレゼンするために制作される短い映像のこと。簡単にいえば「試作品」だが、クライアントを納得させなければならないため、かなり高いクオリティが求められる。今回放送されるパイロット・フィルムは、当時のモンキー・パンチ氏も「僕の描いた原作の雰囲気がものすごく出ていた。これまでのアニメとはまったく違う」と大絶賛したほどのもの。「ルパン三世」のパイロット・フィルムには、画面サイズや声優の異なるものが2種類存在するので、以下にその違いを解説する。
ルパン三世 パイロット・フィルム【シネスコ版】
1969年に劇場公開の長編を目指して、画面の縦横比「1:2.35」のシネマスコープ・サイズで制作されたもの。13分のショートムービーで、原作を元にキャラクターの関係性を描いている。ルパンの声優を野沢那智氏が担当するなど、後のテレビシリーズとはキャストがやや異なる。

ルパン三世 パイロット・フィルム【スタンダード版】
劇場企画が頓挫した後、1971年頃にテレビシリーズの企画用に画面の縦横比「3:4」で作り直されたもの。内容はほぼ変わらないが、映像はすべて新たに撮影され、背景なども描き直されている。なお、ルパンの声優は広川太一郎氏が担当した。

まさに「日本アニメ史に残る名作」と呼ぶにふさわしい「ルパン三世」。モンキー・パンチ氏の遺志を継いだクリエイターたちが、これからも新たな「ルパン」を描き続けることだろう。その原点たる「ルパン三世(PART1)」を観たことのない人は、この機会にぜひご覧あれ!
文=木谷誠
■シネフィルWOWOW 3カ月連続特別企画「世界がふり向くアニメ術」特別版
特設ページ:https://www.cinefilwowow.com/japanimation-3masterpiece/■シネフィルWOWOW視聴方法
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