オトナのP.A.WORKS 【SHIROBAKO特集番外編】

特集番外編2

公開日:2020/3/10

オトナのP.A.WORKS 【SHIROBAKO特集番外編】

編集K

 2月29日から劇場版が公開されている『SHIROBAKO』は、2015年にテレビシリーズが放送されていた当初から、普段アニメを見ない知人たの間でも話題にのぼっていた。

 しかも「本当に良いものを観た」というテンションで真っ直ぐに作品について語る彼らの姿が印象的だったので(普段は相当ひねくれている人たちだ)、DVDを借りて視聴した。

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 涙が止まらなかった。

 今回、特集を企画する際に意識せざるをえなかったのは、やはりP.A.WORKSだ。

 アニメ業界と出版業界は似ているようで異なる部分が多く、第一にアニメは一つの作品に関わる人数が多い。雑誌編集やコンテンツ開発の分野においては、編集者の独断専行がある程度許される(と思っている)が、それは企画に関わる人数が少ないからで、つまり制作予算も大したことはない。一方でアニメの制作においては、時間も労力も人数も、それなりのボリュームが投下されている。

 そんな中で「アニメの制作現場を描いたアニメ」を作るという判断を下すには、相当の覚悟が必要だったはずだ。細かい部分ひとつとってもそこにアラが見えてしまえば、作品の構造上、そのメッセージ全体が損われてしまうリスクが常にあるからだ。

 一体、あの『SHIROBAKO』はどんな人たちが作っているのだろうか? P.A.WORKSのある富山県南砺市に、マンガ家の青木U平さんと訪れることができた。

 社屋は驚くほど綺麗。富山駅から車で2時間程度という立地も手伝ってか、自然豊かな周囲の環境はもちろん、スタジオ内も静寂に包まれている――のだが、実際にスタッフの皆さんにお会いすると、まぁもうそれはそれはクレイジーなプロフェッショナルの集まりで興奮した。(この辺りは誌面で青木U平先生がじつにうまく描いてくださっているので、是非一読してほしい)

 実際の滞在は2時間程度だったが、原画マンが作業する現場も見学させて頂いた。

 シュッ、シュッ。

 鉛筆が紙の上を走る音が聞こえてくる。

 そのすぐ隣のスペースで司令塔として動く制作チーム。

 彼らは本当にかっこよかった。

 目にするみなさんが本当に楽しそうで、真剣。

 絵を作って動かす、その基本に全員が向き合っている感じがするのだ。

 オフィスの中は至って静かなのに、その上空には神輿のようなものがあり、スタッフはその運行のためのエネルギーを脳みそと直結したパイプを通じて送り込んでいる――。

 真面目な顔をして、脳内ではそれぞれがお祭り騒ぎをしている――。

 そんな絵が浮かんだ。

 チームで作り、チームで考え、チームで作品を届けようとするアニメーション制作の現場。個々の皆さんが本当に魅力的だと感じたし、そんな彼らが作ったものはちゃんと届いてほしいよな、そう思ってしまった自分がいる。

 アニメと、それを作る人々が放つ輝き。仕事の大変さと面白さは、現実の世界を生きる私たちだけが知っている。『SHIROBAKO』というアニメは、きちんと苦労をしている大人たちの活力になる。

 ここで今回の特集内容を簡単にご紹介させて頂くと、

・宮森あおい×宮井 楓 描き下ろしイラスト(裏表紙にも!)
・[キャスト対談]木村珠莉×佐倉綾音
・[インタビュー]P.A.WORKS代表・プロデューサー 堀川憲司

 といったいわゆる“中の人”たちに作品や自身の仕事について語り、表現して頂く企画に加え、自身が執筆した『Another』が『SHIROBAKO』と同じく「水島努×P.A.WORKS」という布陣でアニメ化され、『SHIROBAKO』についてもTVアニメ放送当時からSNSで激賞していた小説家・綾辻行人氏にもインタビューをお引き受け頂いた。

 弊誌読者にはミステリーやホラーのイメージが強い綾辻氏が、『SHIROBAKO』の一体どこに惹かれたのか。是非誌面でご一読頂きたい。

 また、弊誌WEB「ダ・ヴィンチニュース」でも『SHIROBAKO』特集を展開。WEBオリジナルとなるメインキャスト5人による座談会記事が既に公開中で、こちらもあわせてチェックしてほしい。