不穏でぞっとするような美しさ──世界中の「人体解剖図」から人間の“中身”を学ぶ

文芸・カルチャー

公開日:2020/9/12

世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術
『世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術』(著:ジョアンナ・エーベンステイン、監修:布施英利、訳:植村亜美/パイ インターナショナル)

 人間の体は誰もが見慣れているが、その“中身”は謎に満ちあふれている。理科の授業などで「人体解剖図」を目にして、思わず目が離せなくなった経験はないだろうか? 不気味でぞっとするようなビジュアルなのに、なぜか心をくすぐられる──そんな人体解剖図の魅力を味わいたい人は『世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術』を手に取ってみてほしい。

「人間の体はどうなっているのか」という謎を解き明かすため、人類は古くから探究を続けてきた。同書に掲載されているのは、飽くなき探究の歴史を物語る古今東西の人体解剖図250点。場所はヨーロッパ・アジア・日本など世界各地、時代は16世紀から現代まで、途方もなく幅広い作品が蒐集されている。

世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術

世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術

 解剖学という学問はヨーロッパではルネサンス時代の頃から本格的に始まり、近代において最も盛んになった。人体の内部まで含めた“地図”を作る解剖学は、視覚的に見て説明することが必要不可欠。そのため解剖学の本には、必ず言葉による解説だけでなく解剖図が付いているのだ。

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世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術

 同書ではそんな古い解剖学の本に収められた解剖図を選び出し、体系化して編集。ヨーロッパのルネサンス時代から近代のものが中心となっているが、20世紀のノーベル生理学・医学賞の研究で使われた現代の図も掲載されている。

世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術

 また日本の江戸時代のものから中国のものまで、掲載作品は西洋の解剖図だけにとどまらない。美しい図も多いので、美術の画集を眺めるような楽しみ方もできるかもしれない。

世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術

世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術

 人体は美術の歴史において、いつも中心的なモチーフだった。古代ギリシアから近・現代、そしてマンガやアニメ、CGに至るまで、人体が描かれない時代はなかったと言っても過言ではない。しかし人体を描くためには人物デッサンのトレーニングだけでなく、人体内部の解剖学を学ぶことも大切。数多くの解剖図を収録した同書は、人体を上手く描きたい人にとって格好の教科書になってくれるだろう。

世界の人体解剖図集 美しく不可思議な人体解剖学の芸術

 人類にとっての“永遠の謎”を詰め込んだ圧巻の大著。勇気を出してページを開き、ミステリアスな魅力に満ちた異世界へと飛び込んでみよう。