百人一首ブームを牽引する『ちはやふる』と『うた恋い。』

マンガ

公開日:2012/10/10

 「バン」と激しい音とともに札が飛ぶ冒頭シーンで、読者を一気に引き込んだ『ちはやふる』。百人一首の地味なイメージをも吹き飛ばし、本作の影響で、競技かるたを始めた人も多いという。現在では、京都の「小倉百人一首殿堂 時雨殿」や、滋賀の「近江神宮」でも展示がされ、百人一首の魅力再発見に貢献している。時代は空前の百人一首ブームだ。

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 そんなブームの一翼を担うものとして、『超訳百人一首 うた恋い。』も見逃せない。百人一首の恋の和歌(うた)を一話完結で描くが、その超訳ぶりが新鮮なのだ。例えば、「ちはやぶる 神代も聞かず~」の在原業平の和歌。将来、帝の妃となる高子(たかいこ)との悲恋を詠むが、その高子が「ツンデレキャラ」だったりと、本作ならではの解釈が現代人にもなじみやすい。しかし、時代背景や人物相関など史実に基づく部分はしっかりと解説。和歌本来の味わいを損なわず、予備知識ゼロで百人一首の世界を楽しめるのだ。

 競技かるたを一つのスポーツとして描いた『ちはやふる』と、和歌に込められた恋を現代にもわかりやすく描いた『うた恋い。』。この2つがある今、ブームは単なる一過性のものではなくなるかもしれない。

文=倉持佳代子
(ダ・ヴィンチ11月号「出版ニュースクリップ」より)