生きづらい「今」に苦しむあなたに――モヤモヤした現状から一歩踏み出すための思考と行動のヒント

暮らし

公開日:2022/8/6

 日々の暮らしに物足りなさを感じても、新しい一歩を踏み出すには勇気がいる。何のスキルもないから、現状で妥協するしかないと思い、日常生活を作業のようにこなしている人も多いのではないだろうか。

 そんな人生を変えるきっかけを授けてくれる1冊が、『私らしく、のびのびと。「やめる」ことを「やってみた」』(多田千里:編/主婦の友社)だ。

 本書に綴られているのは、モヤモヤした現状から一歩踏み出すための思考と行動のヒント。在宅ワーカーという働き方を選んだ元会社員やYouTuberに転身したショップオーナーなど、5人の女性が現状打破した先で見つけた幸せを紹介。彼女たちがモヤモヤした時に行った&行っている対処法も具体的に知ることができる。

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「会社員」という働き方が合わない自分に自己嫌悪

 周りからすれば、些細だと思える出来事に心が敏感に反応してしまう、繊細な自分が嫌だ。会社で働いていると、そんな悩みを抱えてしまうこともあるだろう。

 現在、ライフスタイル系YouTuberとして活躍するnanohaさんも、そのひとりだった。彼女は、上から求められる人物像に生来の性格が合わず、新卒で入職したインフラ系の公共団体を2年で退職。

 その後、建設会社の営業事務に就くも、再び同じ悩みに直面。職場での環境の変化が仕事のパフォーマンスに影響し、集団の中で働くことに疲れてしまう自分には会社員という働き方が合わないと気づいた。

 しかし、その悩みを解消する術は分からず。入社から1年半ほど経った頃、精神面からくる体調不良で4カ月ほど休職することになってしまった。転職をすれば何かが変わるのではと転職活動をするも、どこにも受からず、余計に自己嫌悪する事態に陥ってしまう。

 職場に復帰すると、周囲は優しく接してくれたが、そうした気遣いも自分を責める理由になった。

「自分の能力不足を自覚するほどに、こんなに恵まれているのにやめたいと思うなんて、ぜいたくでは? と思ったりもしました」

 そこで、自分の苦しみを見て見ぬふりし、仕事をこなしたが、心身に異変が。それでもやめられない状況が続いたが、失恋を機に、これまでずっと自分が「他人軸」で生きていたことに気づき、人生を見直すことに。

 一旦、会社という場所から離れて自分と向き合うため、1年間無収入で生活できるくらいのお金を確保しようと考え、副業としてYouTubeを開始した。

 すると、その中で自分の内側を見つめ、「限りあるものの中で楽しく過ごすことができる」という強みを発見する機会を得ることができたことから、ありのままの自分でいいと思え、自分軸で生きられるようになった。

 そこで会社員をやめ、自分の性格に合った在宅ワーカーという働き方を選択。現在はリアルな生活費を公開しながら、限りある中で心も身体も豊かになれる暮らし方を動画で配信し、多くのファンを得ている。

 nanohaさんの体験談は、履歴書に書けるスキルだけが強みでないと気づかせてくれる。自分の繊細さに頭を抱えている優しい人にこそ、読んでほしい。

アイデンティティは自分で創れる

 現在の仕事や肩書きが自分のアイデンティティになっていると、「やめる」を選べないことも…。けれど、勇気を出して手放してみると、予期せぬワクワクに出会えるかもしれない。

 そう教えてくれるのが、20年間続けてきたフリーライターという職を手放したしょ~こさん。

 インテリア誌を活動の場としていたしょ~こさんは、取材で全国を飛び回ることが体力的につらくなってきたことや出版不況から、仕事量が減ってきたことに不安を感じていた。だが、ライターであることが自分のアイデンティティであると思っていたため、職を手放すことができなかった。

 ところが、コロナ禍をきっかけに、見て見ぬふりをしていた不安要素が表面化。このままではいけないと求人雑誌を読み漁り、面接を受けるも不採用。

 そんな時、春の陽気に誘われベランダに出てみたところ、自分が長年、見晴らしも風通しもいい環境で暮らしていたことに気づいたそう。

 そこで、「好きなものだけを部屋に置く」というルールを設け、汚部屋を見直してみることに。引き出しひとつから始めた小さな見直しは家全体の見直しとなり、自身の人生を見直すきっかけになっていった。

 それにより、自分を蔑ろにして働いてきたことに気づいたしょ~こさんはライターを引退。現在はインスタグラマーとして活躍しつつ、デジタルマガジン「しょ~こジャーナル」を配信。「自分に正直に生きる」を大切に、日々を謳歌している。

 50歳からだって人生は変えられる――。そう語るしょ~こさんの言葉は、今の生き方に不安を抱きつつも動けない人の背中を力強く押してくれるはず。

 真面目で頑張り屋の人ほど、現状打破が怖く思えたり、「やめる」を選択するのが悪いことのように感じてしまったりもするが、「今」を手放してこそ掴める幸せはある。

 本書には、自分らしさを取り戻す思考のヒントがカラフルなイラストと共に描かれているので、そちらも要チェック。

私らしく、のびのびと。「やめる」ことを「やってみた」

私らしく、のびのびと。「やめる」ことを「やってみた」

 モヤモヤ期を「変革期」と捉え、幸せの入り口を探してみてほしい。

文=古川諭香

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