マグロ漁船の船員、浮気調査員……“経歴学歴不問の職場”の実態

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公開日:2022/8/18

潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた
潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた』(野村竜二/鉄人社)

「働かざる者食うべからず」なんてことわざもあるように、労働は人が生活するうえで欠かせない要素。そのため、多くの人々が働けるように、世の中には多種多様な職業が存在しています。求人サイトを少し覗くだけでも、その数の多さに驚きますよね。求人票には、業務内容や給与額などの最低限の情報のほかに、企業が応募者に求める条件が書かれた募集要項が記載されています。経験者優遇や高卒以上などの条件もあれば、未経験OK、学歴不問など応募のハードルが低いものもチラホラ。

 先日発売された『潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた』(野村竜二/鉄人社)は、そんな経験学歴不問の職業にスポットを当てた一冊です。

 同書は二部構成になっており、第1部の「働いてみた」は、著者の野村竜二氏がさまざまな「経歴学歴不問」の職場に潜入し、その体験を綴るルポルタージュ。浮気調査員としてラブホテルの前で2時間張り込むなど、アングラな職場にも足を踏み入れています。もしかしたら、あなたが気になっていた職業も野村氏が潜入しているかもしれません。

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 そして第2部の「今すぐ雇ってもらえる“稼げる仕事”」では、実際にその職場に携わっている人が、業務の内容やメリット・デメリットを語っているので、リアルなお仕事事情に触れられます。

 たとえば、ドラマや漫画で、怖い借金取りが借り主の脅し文句に使いがちな「マグロ漁船」。同書には、そんなマグロ漁船で10カ月間働いた人の経験談も載っています。ちなみに、彼はギャンブルで作った借金を返すために遠洋マグロ漁船に乗ったそうです。

 船の行き先は赤道付近のインド洋。目的地に着くまでの2週間は、とくに何もすることもなく、寝て過ごしてもOKだとか。

「が、漁場に到着した途端、一気に忙しくなる。まずは早朝4時からはじまる投縄。手のひら大の釣り針に小魚をつけたものを海に投げ込んでいく作業で、これが4時間、延々と続く。
 投縄が完了した数時間後(正午ごろ)には揚縄がスタート。先ほど投げた縄をどでかい電動リールで引っ張るのだが、その動きに合わせて船員たちも両手で縄を引き揚げるのだ。そして、見事マグロが針にかかっていたときの高揚感はヤバい。船中に雄叫びが走る。」

 揚縄作業は深夜1時前後まで続き、その間、何度か休憩や食事の時間があるものの、それぞれに5分しか与えられないとか……。そのため、作業が終わる頃には当然フラフラ。漁に出ている10カ月のうちハメを外せるのは、3カ月に1度外国の港に停泊する3日間のみ。

「いつまでたっても船酔いに悩まされるし、大ケガする可能性も常にある、さらに夜の海に転落すればほぼ確実に死ぬのだが、そういったことを考慮しても、マグロ漁船に乗った価値はあった。日本に帰国して約400万の給料を見たとき、心の底から俺はそう思えたのだ。」

 まさに危険と隣り合わせの“職場”。借金取りが「マグロ漁船に乗せるぞ」と、脅し文句に使うのも頷けますね。

 そのほかにも、マイナス25℃の極限状況で働く「冷凍倉庫作業」や、現金や貴重品を車で運ぶ「輸送警備」など、さまざまな仕事が給与額とともに掲載されています。

 お金や仕事になにかと不安を感じる現代、同書を読んで多様な職業を知っておくだけでも安心感が得られるかもしれません。

文=フクロウ太郎

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