夫婦“シフト制”を導入すれば、新生児育児を楽しめる? 男性育休取得の実体験を綴った1冊

出産・子育て

公開日:2023/3/12

育休夫婦の幸せシフト制育児
育休夫婦の幸せシフト制育児』(芳田みかん/オーバーラップ)

 近年増えてきた男性の育休取得。しかし場合によっては取りたくてもなかなか取れない人もいる上に、「ママがいるのに、パパまで育休取る必要ある?」なんて声を聞くことも……。実際筆者の夫は第二子出産時(2018年)に3か月の育休を取得し、今では上の子が「ママよりパパの方が好き!」と豪語するほど家事育児に積極的なタイプですが、第一子出産時(2016年)は取得していません。その理由を夫に聞くと、当時は男性の育休取得がまだ少なかったこともあるとしつつ、「そもそも子どもが一人だったら自分が育休を取得する必要はないと思った」とのこと。

 私個人的には、初めての育児だった第一子新生児期の方が精神的には辛かった記憶があり、勝手に判断されたこととその一言に今でももやもやしています。しかし振り返ってみると、第一子出産前は自分自身ですら育児の辛さをまったく想定していなかったのも事実。本稿で紹介する『育休夫婦の幸せシフト制育児』(芳田みかん/オーバーラップ)のように、新生児期の困難・不安の紹介と、その上で男性が育休を取得するメリットを教えてくれる本が自分の出産前にあったら……! と思いました。

 筆者・みかんさんの第一子妊娠中、夫・タロウさんは会社の先輩から「育休取るのかな?」と声をかけられます。自身も育休を取得したという先輩の話を聞いて、タロウさんも育休取得を決意。産後、母体の回復に1か月はかかること、赤ちゃんの生活リズムが安定するには2~3か月はかかることなどの事前知識をふたりで得た上で、タロウさんは育休を3か月取得することにしました。そしてみかんさんの出産後、1か月の里帰り期間を経て、タロウさんの育休がスタートするのです。

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 新生児育児に昼夜の区別はありません。そこでふたりは一日を8時間に分け、0時から8時までをみかんさんが担当、8時から16時まではふたりで育児をする時間、16時から0時までをタロウさんが担当するシフト制を組むことに。食事の時間の確保やみかんさんのメンタル問題などで微調整しつつも、この3交代制をベースに生活をしていきます。

 ここで育児経験者ならば気になるのが母乳と黄昏泣き問題。産前はミルク導入にこだわりがなかったみかんさんですが、産後母乳の出が悪くなると自分を責め、産後のメンタル不調もあいまって精神的に不安定になってしまいます。母乳は吸わせる回数が増えるほど分泌されると言われているため、みかんさんは非番の時間も一度起きて授乳する生活を試みることに。しかしやっぱり睡眠不足になり、みかんさんはさらに辛くなってしまいます。

 そこでタロウさんとミルク育児・母乳育児両方のメリットを話し合い、タロウさんが当番の時はミルクを使うことにするのです。そんなタロウさんは、赤ちゃんがよく泣くと言われる夕方・黄昏泣きの時間帯が自分のシフトに入っていることもあり、子どもを泣き止ませるのに一苦労。ミルクをあげてもおむつを替えても泣き止まない。これは育児初期一番のストレスと言っても過言ではありません。しかしタロウさんは照明の調整やおくるみの巻き方など、トライ&エラーの精神であらゆる側面から試行錯誤。さらにそれを夫婦で情報共有することで乗り越えていきます。

 育児経験者として本書を読んで一番感じたのは、このように育児を自分事と捉えている人間がもう一人いて、相談できることの心強さです。みかんさんも夫婦シフト制育児の良いところとして

①夫婦そろって育児スキルを身に着けられる
②産後の心身回復が早い
③自分の時間が十分に取れるのでリフレッシュできる
④常に赤ちゃんを見られるから安心
⑤夫婦で赤ちゃんの話題で盛り上がれる

 の5つを挙げています。とにかく初めての育児には想定外のことも多く不安がつきもの。それを同じ立場で共有できる人間がいたらどれほど心強いかと思います。

 そのほか、本書には“男性が育休を上手に取得するには?”としてタロウさんが育休を取得した時の具体的な行動や、やっていてよかったことも解説。さらにはタロウさんが仕事復帰にあたって、ワンオペへの移行方法や家事の効率化を目指したお話も。

 育児をきっかけに夫婦の間に生まれた溝はその後も広がりやすいもの。幸せな家族を目指す第一歩として。出産を控えたプレママ・プレパパに読んでもらいたい一冊です。

文=原智香

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