鳴き声つきの後追いは、猫にとっての不穏なサイン!? よくある問題行動への対処法が満載。動物行動学で解明する“うちの猫の気持ち”

暮らし

公開日:2023/6/21

動物行動学+猫マンガ ニャン学
動物行動学+猫マンガ ニャン学』(茂木千恵:監修、ひぐちにちほ:マンガ/主婦の友社)

 この子は今、何を考えていて、どういう気持ちなのだろう。愛猫と暮らす中で、そうした思いに駆られ、猫語が話せない自分を歯がゆく思ったことがある猫飼いさんは多いはず。特に、愛猫が問題行動をし始めた時には、どんな不満やストレスを抱えているのか教えてほしくなる。

 そんな時、頼りになるのが動物行動学の観点から、猫の気持ちを読み解いた『動物行動学+猫マンガ ニャン学』(茂木千恵:監修、ひぐちにちほ:マンガ/主婦の友社)。監修の茂木千恵氏は獣医師で、動物行動学者。株式会社モンパニエ 動物行動学研究室を開設し、猫・犬の問題行動の治療カウンセリング、問題行動予防のための調査研究などを行っている。

 本書では実際に寄せられた悩みをもとに、猫によくある問題行動を取り上げ、動物行動学の観点から原因や解決法を紹介。マンガとコラムで猫心がわかる作りになっている。

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好き嫌いだけが理由じゃない! フードを食べたり食べなかったりするワケは…?

 愛猫がフードを食べたり食べなかったりすると、飼い主は頭を抱えてしまう。色々な種類のフードを用意したり、食べるまで置いておいたりと、悩みながらさまざまな対策をしている人もいるだろう。

 食事の悩みには好き嫌いが大きく関係しているように思えるが、動物行動学の観点から見ると、他の理由が潜んでいる可能性も…。茂木氏いわく、猫が食事をしないのには、「食事の時間がつまらないから」という理由もあるのだとか。

 野生だったころ、猫は狩りで獲物を得ており、成功した時の達成感が気持ちよく、食欲に繋がっていたそう。そのため、何もしなくても食事が出てくる環境では達成感が得られず、食べる気になれない猫もいるというのだ。

 そんな猫に茂木氏が勧めるのは、中にフードやおやつを入れられる、知育おもちゃを使った食事だ。自分で工夫してフードを得ることは狩りの疑似行為となり、達成感が得られて食事が楽しくなるのだそう。

 はじめのうちはフードを入れるところを見せたり、蓋を緩めに締めて難易度を下げたりして、フードが取れたという成功体験をさせてあげることが大切だ。

動物行動学+猫マンガ ニャン学 P51

動物行動学+猫マンガ ニャン学 P52

 なお、知育おもちゃを選ぶ時は4つのポイントを意識したい。

①かじっても壊れにくい
②なめても安全な素材
③丸のみできないサイズ
④洗いやすく、清潔が保ちやすい

 知育おもちゃは頭を使うため、適度な疲労感も得られ、運動欲求の解消にも繋がるのだそう。飼い主が食事の準備を負担に思わなくてもいい、この対処法、ぜひ試してみてほしい。

鳴き声つきの後追いは言いたいことがある証拠!

 まるで自分を母猫のように慕い、後追いしてくれる愛猫の姿はかわいいもの。しかし、茂木氏によれば、鳴き声つきの後追いをする場合は注意が必要だという。なぜなら、猫は甘えや親愛の気持ちを伝えたい時には無言で後追いをするからだ。鳴きながらの後追いは、要求やお願いがあるサインだという。

 要求があって鳴き声つきの後追いをする猫は、耳が少し後ろに引かれ、口を閉じて終わる鳴き方をするのだそう。

動物行動学+猫マンガ ニャン学 P141

動物行動学+猫マンガ ニャン学 P142

 愛猫が、ずっと鳴き声つきの後追いを続けるのであれば、生活環境を見直す必要がある。

 チェックすべきは、猫の基本的な暮らし方。快適なベッドはあるか、トイレの数は足りているか、コミュニケーションの時間は取れているかなど、飼育環境や日常生活を見直してみると、鳴き声つきの後追いをなくすヒントが見つかるはずだ。

 愛でるだけで終わってしまいそうな行動にも猫なりの理由がある。そう気づくことができれば、愛猫に今よりもっと幸せな生活をさせてあげられるだろう。

 茂木氏は他にも、半年以上懐かない保護猫への接し方や多頭飼いならではの問題行動への対策なども紹介。最新の研究を踏まえた“イマドキの猫事情”や、動物行動学を踏まえたあるあるな猫しぐさの解読など、タメになる情報も満載だ。

 猫との暮らしを、もっと快適で楽しくしてくれる「ニャン学」。猫好きさんにぜひ、学んでほしい。

文=古川諭香

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