「魚はなぜルアー(擬似餌)に食いつくの?」ルアーアングラーが自問自答してきた問いに迫る

暮らし

更新日:2023/7/29

ルアーのひみつ 魚がヒットする、動き・色・素材・仕組みの真実
ルアーのひみつ 魚がヒットする、動き・色・素材・仕組みの真実』(奥山文弥/つり人社)

 釣り人気が続いている。釣りを知らない人は、なぜ、これほど多くの人が釣りに熱中するのだろう、と思うかもしれない。釣りといえば、気持ち悪い虫エサを触って付け、じっと待つだけの退屈な趣味。そう考えている人もいるのではないだろうか。エサ釣りは、実はテクニカルで知識量も求められる難しい釣りではあるのだが、その話は置いておいて、釣りには大きく分けてもう一種ある。それが、ルアー釣りだ。

 ルアー釣りをする釣り人を「アングラー」と呼ぶが、アングラーなら誰もが興味をもちそうな書籍が、このほど発売された。『ルアーのひみつ 魚がヒットする、動き・色・素材・仕組みの真実』(奥山文弥/つり人社)だ。本書は、「魚はなぜ、ルアー(擬似餌)に食いつくのか?」という、古今東西のあらゆるアングラーが自問自答してきた問いに答える本。物理的理由、魚類の生態学を基に書かれており、説得力ある一冊だ。

 本記事では、ルアー釣りを知らないが興味はある読者のために、本書から雑学風にルアー釣りのトピックをいくつかお届けしたい。まずは、先述のルアー釣りとはどういうものなのか、本書の内容から簡単にまとめ直して紹介する。

advertisement

【ルアーのひみつ1 ルアー釣り(ルアーフィッシング)とは?】

 ルアーと呼ばれる鉄などで作られた擬似餌釣り。黎明期には「スポーツフィッシング」などと呼ばれる。絶えず、ルアーを投げて、リールを巻くの繰り返し。1日に何百回も投げたのに釣れない、魚がいるのが分かっていても、どうやっても偽物には魚が食いつかない時もあるが、そこが面白い。エサを使わないため気持ち悪くない、手が汚れない、臭くならないなど、虫エサ(ミミズやゴカイなど)が苦手な人にも入門しやすい釣り。

 ルアー釣りの魅力が伝わるだろうか。どのルアーを選択するか、そして動かすか、といった個人の知識や技量次第で、釣果が大きく変わるため、上手い人と上手くない人の差が如実に表れる。そのため、アングラーは必死になって知識・技術向上にいそしむ。

 さて、次に気になるのは、小魚を食べて育ってきた知能ある魚が、なぜルアーに騙されて捕食するか、という疑問だ。本書には、このようにある。

【ルアーのひみつ2 魚がルアーに食いつく理由?】

 魚がルアーに食いつく理由は食欲、好奇心、反射、攻撃の4つがあるといわれてきたが、今では食欲と攻撃の2つの理由に絞られている。魚はいつもお腹を空かせている。魚はルアーをつなぐライン(糸)やフック(釣り針)が見えているが、ルアーがエサではないことを見破らない限り、食欲や攻撃などの本能で食いついてくる。

 アングラーは、自分が思う「釣れそうなルアーの種類」「形や重さ」「色」ほか、無限にもありそうな選択肢からチョイスして、釣れると信じて投げ続ける。そうして、魚にエサだとばれず食いつかれると、竿が大きく曲がり、魚とのファイトが始まる。しかし、不運にも針が途中で外れることがある。アングラーを落胆させるフッキングミス(針掛け失敗)やバラシ(針外れ)である。本書は、キャッチ率(釣り上げ成功率)を上げる方法にも言及している。

【ルアーのひみつ3 魚のキャッチ率を上げる方法?】

 魚は周りの水ごとエサを吸い込む。多くの魚は、自分が泳ぐ深さよりも浅い場所のエサを食べようとする。食いついたら、自身の安全確保のためにも元の深さあるいは場所に戻ろうとする。ここで竿が曲がる。しかし、魚は一度食べたルアーを偽物だと判断すると吐き出し、同じルアーを口にしない。「コツンコツンと何回か来てそのうちギューンと掛かった」というよくある現象は、1尾ずつくわえて吐き出している。魚の口は骨と表皮で構成されており、部分によって針の刺さり込みが変わる。そのためアングラーは、追いアワセと呼ばれる、ロッド(竿)を3~5回思いきりあおる行動をとる。

 ルアーで魚を騙し切って釣り上げた1匹は、自分の知識・技量の結晶でもあるため、その喜びは想像だにしないほど大きい。本記事では、ルアー釣りを知らない読者向けにトピックを紹介したため、すでに釣りを始めているアングラーには物足りない内容だったかもしれないが、本書はどちらかというと、ディープなアングラーを魅了するコアで説得力高い解説が多くを占めている。

 ルアー釣りのベストシーズンといえば、数釣りができる秋。暑い夏は、本書を読みながら、来る爆釣シーズンに備えてみてはいかがだろうか。

文=ルートつつみ (@root223

あわせて読みたい