恋人の裏の顔を知ってしまい、恐怖のどん底に。彼のスマホに保存されていた写真とは…『身の毛がよだつゾッとした話』

マンガ

更新日:2023/11/17

この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

身の毛がよだつゾッとした話
身の毛がよだつゾッとした話』(しばたま/KADOKAWA)

 日常に潜んでいる恐怖や怪異をマンガ化し、ダ・ヴィンチWebで人気を集めているしばたまさんの連載「しばたまが聞いた! 本当にあったすごい話」。著者のSNSに寄せられたフォロワーの実体験に基づいて描かれているだけに、どの話も現実的で、他人事とは思えない恐ろしさがある。これまでに発表された作品群から特に反響の大きかったエピソードを抜粋し、さらに100ページ以上もの描き下ろしを加えて『身の毛がよだつゾッとした話』(KADOKAWA)というタイトルで書籍化された。ちなみに表紙にもゾッとする趣向が凝らされているので、ぜひ帯を取って見てみてほしい。

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 収録作品はどれもこれもインパクトの強いものばかり。

 職場でアルバイトの男性に好意を持たれてしまい、対応に困った私は仲のいい男性の同僚に相談する。親身になってアドバイスしてくれる彼に、心強さを覚えるが……。(第1話「会社の同僚」)

身の毛がよだつゾッとした話 P9

身の毛がよだつゾッとした話 P11

 道ばたで声をかけられたのをきっかけに、近所に住んでいるその男性と交際するようになった私。彼はとても心配症で、私の行動を逐一チェックしたがって……。(第9話「彼の本性」)

身の毛がよだつゾッとした話 P133

身の毛がよだつゾッとした話 P136

 ふんわりとした可愛らしいイラストが実に効果を生んでいる。どの話も一見ほのぼのとして、安全・安心といった雰囲気があるが、2ページ、3ページと読み進めていくうちに次第に手が汗ばんでくる。これって……やばいんじゃない? と。

 そう。実際のところ恐怖とは、ある日突然やってくるようなものではない(通り魔やテロは除いて)。日々の暮らしのなかから少しずつ始まり、最初は私たちも特に違和感を覚えない。しかし徐々に、あるいは時間が経ってから、その出来事が異様であったことに思い当たる場合も多い。とりわけ子ども時代に受けた性犯罪や虐待は。

 第7話「鉄棒おじさん」や第10話「たくや君」は、守られるべき存在である子どもたちが、大人によって傷つけられる内容だ。

身の毛がよだつゾッとした話 P106

身の毛がよだつゾッとした話 P107

 当事者である彼らは幼くて、自分たちが被害者であるということが分からない(それに気づくのは彼ら自身が大人になってからだ)。

身の毛がよだつゾッとした話 P149

身の毛がよだつゾッとした話 P150

 子どもの純真さにつけ込む大人がこの世界には存在するという残酷な事実をマンガで伝える一方、そうした事態を少しでも防ぐにはどうすればいいかをコラムで提唱している。

 その他ストーキングに隣人トラブル、殺人事件に心霊現象など、多種多様なゾッとする話が盛り盛りの本書のなかでも白眉は最終話、著者自身の体験を材にした長編「友人の話」だ。

 生きづらさを抱える“私”こと小春は、昔から周囲に誤解されやすく、親しい人たちに裏切られ続けてきた。だけどSNSで知り合った友人の佳奈子は私を否定せず、受け入れてくれる。佳奈子を信頼し、なんでも話すようになるけれど、ある日突然、佳奈子の態度が豹変する……。

身の毛がよだつゾッとした話 P206

 というストーリーを小春と佳奈子、双方の視点から描いている。ともすれば友人同士の間に生まれやすい支配や共依存が「あるある感」満載で展開され、こういう人間関係に身に覚えのある方も多いのではないだろうか。

 あとがきで綴られているように、これらの話はけっして絵空事ではなく(なにしろ実体験集なのだから)、誰の身にも起こり得る、言ってしまえばありふれた出来事だ。だからこそ、少し意識を変えさえすれば防げることや、気づけることが多々ある。消費としての恐怖ではなく、学びに充ちた恐怖――本作が多くの読者を獲得している理由は、ここにあると思う。

文=皆川ちか

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