贈り物は3段階に分けると効果的!? 情報収集のプロが伝授する、相手の懐に飛び込むための対人コミュニケーション術

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公開日:2024/2/28

元公安捜査官が教える「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術
元公安捜査官が教える「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』(稲村悠/WAVE出版)

 警視庁公安部。その役割は、日本全体の治安や国益を侵害するような行為を未然に防ぐことである。対峙するのはテロリストや敵対国の勢力など。刑事ドラマさながらの現場では情報収集が欠かせないという。

 書籍『元公安捜査官が教える「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』(稲村悠/WAVE出版)は、タイトルそのもの。公安捜査官という仕事の中で、交渉術や信頼関係の構築法などを会得した著者・稲村悠氏が、対人コミュニケーションの本質的なテクニックを授ける1冊だ。

グッと心をつかむために「プレゼントの3段活用」

 相手の懐に入り込む。元公安捜査員の稲村氏が語るテクニックの数々は、どれも現実的だ。

 例えば、相手との距離を近づけたい場合、有効になるのがプレゼントだ。ただ、漫然と渡すだけではダメ。本書では以下のとおり「プレゼントの3段活用」を紹介している。

①相手がほしいものではないが安価なもの
②相手がほしいもの
③おまけ

 著者いわく、それぞれ役割がある。①を差し出すのは、いったん相手に「肩透かし」を食らわせるためだ。「ビミョー」な感情となった相手に②の「本命」をプレゼントしてテンションを上げ、③で自身の「好意」をたたみかけるように示す。

 実際、著者は過去、絵が好きな人物に、好きな画家の画集、好きな画家の展覧会のチケット、その画家が描いた名画がプリントされたTシャツをプレゼント。狙い通りに、相手との距離も縮まったという。

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私服からスーツに。ギャップで「緊張と緩和」を

 不安や恐怖をおぼえた男女が、急激に近づく「吊り橋効果」。よく聞く現象だが、これは何も男女に限った話でもないようだ。

 対人コミュニケーションでは緊張と緩和を使い分ければ、意のままに相手の心を動かせる。かつて、公安捜査員としての取り調べも数多く経験した著者のテクニックは、ロジカルで説得力がある。

 緊張と緩和を生むため、まずギャップで相手を動揺させる選択肢があるという。会話に限らず、いつもはカジュアルな服装を好む上司がきちんとしたスーツで出社してくるなど、見た目からギャップを生むこともできる。

 ギャップを演出して相手が動揺してくれたなら、コミュニケーションの主導権を握りやすくなり、ひいては、相手の本音も引き出しやすくなるという。特に相手に嘘をつかれては困る場面や、多少の強制力を行使しても真実を知らなければならない場面では効果的。浮気した恋人、ミスしながらも口をつぐむ部下などと対峙しなければならない場面などでは重宝しそうだ。

 公安捜査員として「実際に試してみて、有効だったテクニックだけを厳選した」という本書の内容は、他のコミュニケーションに関する書籍とは一線を画す。日本の根本的な安全を守るためにと磨き上げられた“対人コミュニケーション術”は、ビジネスとプライベート、いずれの場面でも役立つはずだ。

文=カネコシュウヘイ

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