「いつ治りますか?」精神科で患者さんによく尋ねられる質問。それに対して心理カウンセラーが逆に聞き返す質問とは? 現役臨床心理士・公認心理師によるお仕事マンガ

マンガ

公開日:2024/3/20

白目むきながら心理カウンセラーやってます

 精神科や心理カウンセラーと聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。スクールカウンセラーや産業カウンセラーの存在により昔よりは一般的になってきたものの、実は良く知らないという人も少なくないだろう。白目みさえさんによる『白目むきながら心理カウンセラーやってます』(竹書房)では、そんなカウンセラーの仕事について描かれている。


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 本作は、現役臨床心理士・公認心理師の白目さんだからこそ描ける、お仕事マンガ。4コマでポップに描かれているため、カウンセラーについて良く知らない人でも気軽に楽しめる作品だ。本作を読めば、精神科や心療内科を受診するハードルが下がり、プロに頼りやすくなるかもしれない。もしいま、しんどい気持ちを抱えているのに病院に行くのは大げさかなと感じている人がいるなら、1度本作を読んでみてほしい。

白目むきながら心理カウンセラーやってます

 近年、耳にすることが多い「うつ病」について、実はよく知らない人も少なくないだろう。うつ病は、ストレスが溜まりに溜まって上手く浄化処理できなくなってしまったときに発症する病気だ。そのため、誰でもうつ病になる可能性があるという。

白目むきながら心理カウンセラーやってます

白目むきながら心理カウンセラーやってます

「うつ病になるのは甘え」と考えている人もいるかもしれないが、全くそんなことはない。耐えきれないほどのストレスで思い悩んだときは、心が壊れてしまう前に迷わずプロに相談してほしい。もしも、うつ病について間違った知識を持っていたのなら、本書で認識をアップデートしてもらいたい。こうしたうつ病や心の病についての知識を、心理士から教えてもらえることが本作の魅力といえる。

白目むきながら心理カウンセラーやってます

 白目さんが担当した患者の話で特に印象的だったのは、人員削減により2倍、3倍に増えた仕事をこなしている内にうつ病になってしまった女性の話だ。この女性は仕事に復帰するために「いつ治るのか」を気にしていた。しかし、がんばりすぎて倒れてしまった人にとって「治る」とはなんなのだろうか。「治る」のイメージは本当に人それぞれで、どこをゴールにするかによってカウンセリングの方針や期間が変わるという。まずは患者にとっての「治る」を聞き出して、そこに向かうための最短の方法を一緒に考えることがカウンセリングの目的になる。

白目むきながら心理カウンセラーやってます

「治る」をイメージするとき、自分にとって「楽な状態」を考えるプロセスがある。うつ病の人は自分のことを考えたり、自分の欲求を意識したりすることが苦手な人が多いそうだ。さらに自分の素直な気持ちを受け止めてもらえない・好きなものを否定される経験をした人は、自分の気持ちを伝えることが怖くなることがあるという。

白目むきながら心理カウンセラーやってます

 最近では、誰かの欲求や好きなものを否定する人の方がたくさんの人から非難されることが増えてきたように感じる。しかし、これまでに年齢や性別などさまざまな理由で否定され、傷ついたことがある人も少なくないだろう。本作を読んで過去の自分が否定されたことを思い出した人は、どうかそんな自分を抱き締めて素直な気持ちを自分で認めてあげてほしい。

 本作を読めば、熱や腹痛で病院に行くのと同じように、心の悩みも病院に行って治してしまおうと思えるようになるだろう。周りの人には相談できない内容でも、カウンセラーは「味方」として何よりフラットな立場で自分の気持ちや考えを受け止めてくれる。一般の人では難しい相手の立場に立って話を聞く「傾聴(けいちょう)」のプロなので、困りごとがあるときは気軽に頼ってもらいたい。

文=ネゴト/ 押入れの人

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