「運動会の練習が嫌」で不登校…不登校児を持つ親の不安や孤独を和らげるコミックエッセイ

マンガ

公開日:2024/6/14

学校に行かない君が教えてくれたこと

 長男の登校しぶりをきっかけに、生活が一変した今じんこさん。「はちみつコミックエッセイ」より刊行の『学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで』(今じんこ/オーバーラップ)は、そんな親子の姿を赤裸々に描いたコミックエッセイだ。


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 作品のタイトルから、不登校の解決方法を教えてくれるのかもと期待する方がいるかもしれない。しかし、その気持ちはそっと胸にしまってほしい。なぜなら不登校に限らず、子育てにおいて解決という言葉ほど曖昧なものはないからだ。では、本作を読んだ先に何が待っているのか、それは共感だ。かくいう筆者も不登校の子を持つ親であり、本作に孤独を振りはらってもらった一人である。

学校に行かない君が教えてくれたこと

学校に行かない君が教えてくれたこと

 今さんの長男・もっちんの登校しぶりが始まったのは、小学校に入学してすぐのこと。運動会の練習が嫌だというのが最初の理由だ。「まぁ、そのうち登校できるだろう」と高をくくる今さんだが、そう上手くはいかなかった。

 そこからは不登校ならではの不安が怒涛のように今さん親子を襲う。それでも諦めることなく子どもと自分に向き合い、家族で助け合いながら日々を重ね、当たり前を脱ぎ去る親子の姿が印象的だ。

 親として同様の経験をしてきた方には共感で胸がいっぱいになるだろう。そして、今まさに不登校がチラつき始めた方にとっては、本作が暖かい毛布のような存在となるに違いない。

 不登校ならではの親の悩みはいろいろとある。たとえば、学校へ欠席連絡をすれば朝から身も心も削られ、何かあるたびに育て方が悪かったんじゃないかと自責の念でいっぱいになる。そのうえ周りから心配されるとさらなるプレッシャーに押しつぶされて…。どれも作中にも登場する“不登校あるある”だ。

 不登校の子を持つ親はどうしても不安や孤独を感じやすい。それは、まだまだ学校に行かない選択肢がマイノリティだからだろう。だからこそ、共感できる相手がいることは本当に救いだ。一人じゃないと思えることは、他人の正解を教わるよりもずっと心強い。ちょうど良く身近に同じ状況の仲間がいることは稀だが、作中には「不登校の子を持つ親御さん300人の本音」などのリアルな声も載っているため、この1冊が誰かにとっての安心できるコミュニティのような存在になるだろう。

学校に行かない君が教えてくれたこと

学校に行かない君が教えてくれたこと

 はじめて子どもに「学校行きたくない」と言われたとき、筆者は本当にドキッとした。学校以外の選択肢もあっていいよねと思っていた今さんでも、わが子のその瞬間にはパニックになったと語っている。

 登校をしぶる子どもへの対応、学校との連携、それにより自分の時間が持てないなど、子どもが不登校になると親の負担はそれまでの比ではなくなる。だからこそ、子どものケアと同じように親自身のケアも大事になってくる。本作はその一端を担ってくれる1冊だ。

 もしかすると読みながら苦しくなることもあるかもしれない。それは、今さんが良いことも悪いことも包み隠さず描いてくれているからだし、あなたが頑張っている証拠だ。本作をきっかけに親自身も自分の疲れに気づき、少しずつ親子の笑顔が増えることを願ってやまない。

文=ネゴト/ みっちー

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