「主婦ほどクリエーティブな仕事はない」専業主婦が就職するまでにやっておくべきこと

暮らし

2017/7/26

『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(薄井シンシア/KADOKAWA)

 近頃、漫画家の西原理恵子さんの「卒母宣言」で注目を集めるようになった「母たちの人生第二ステージ問題」。子供が高校卒業を迎える頃には子育ては終了にして、そこからは母自身が「自分のため」の人生を歩み始めればいい…そんな西原さんの姿勢は多くの女性の支持を集めた。子が巣立つのは当たり前で(というかそうでなきゃ困る)、母が一人抜け殻になっているなんて確かにもったいない話だ。近頃はこうした「50代以降の女性の生き方」に注目するTV番組や本をちらほら見かけるようになった。『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(薄井シンシア/KADOKAWA)は、それらの中でも特にパンチの効いた一冊だろう。

 17年専業主婦として一心に育てた娘が巣立ち、深い喪失感に襲われた47歳の頃、ひょんなことから職(給食のおばちゃん)を得て社会復帰。苦戦の末に電話受付のパート仕事に転職し、たゆまぬ努力が実ってついには5つ星+のラグジュアリーホテル勤務となった著者が、長いブランクのある主婦が就職するにはどうしたらいいか、タイトルの通りその心構えと実践を熱く説くというこの本。さまざまな家事と子育てに向き合う「専業主婦」の仕事は、マルチタスクを遂行する面では「仕事」と同じであり、そうした経験は立派な「キャリア」になりうる。大事なのは無意識に主婦業をこなすのではなく「キャリア」として自覚し、いかに「実践力」に転換するか。たとえば家庭を会社のように運営することで経営センスを磨いたり、敬遠されがちなPTA活動で責任と組織の一員でいることの自覚に目覚めたりと、専業主婦の日常の数々は「社会復帰」を前提としたレッスンにできると著者。その力強い口調には迷いがなく刺激的だ。

 とにかく彼女の頑張りはハンパなく、仕事を理由にあれこれ中途半端になってきたワーキングマザーなら複雑な思いを抱くほど。だが「子供は成果。自信にすべき」と呼びかける声は、そのままワーキングマザーにも当てはまるわけで、単にキャリアの種類が違うのだと理解すればいい。

 が、その勢いに圧倒され気後れする読者も当然いるだろう。それもそのはず。著者はフィリピンの華僑の家にうまれ、故郷には帰らぬ覚悟で国費留学生として来日し、後に外務省勤務の日本人夫と結ばれ5カ国で20年暮らしたという強者。30代で妊娠して専業主婦生活に入ったとはいえ、日本の普通の専業主婦とは社会の中で「一個人」であろうとする潜在的なパワーが圧倒的に違うからだ。

 だが、違うからといって「関係ない」とか「私には無理」とか言って終わりにしてしまうのは、実にもったいない話。著者は潜在能力の塊のような50代専業主婦が活躍できないのは、外の壁(採用先があまりない、等)がある一方で、専業主婦自身にも「自信はないが、安売りはしたくない」という内なる壁を作っていることも原因と指摘するが、著者との違いに最初から諦めるのだって同じ“壁”だろう。人生100年時代といわれる今、「仕事をする・就職する」は女の人生の選択肢であり、それを選ぶ意識があるならそんな壁はさっさと取り去ったほうがマシだ。

 実はこの本、ジャスト世代はもちろんだが、子を持つことをイメージし始めた人、あるいは若い子育てママにも将来を見据える上で刺激になるだろう。ただしどの世代も、著者の生き方はあくまで参考にして、頑張りのレベルはその人それぞれで。「この人はこの人。マイペースでやるわ」と心の余裕を持てるのも、子育てで培う許容力の賜物なのだから。

文=荒井理恵