自分を守るには「自分の心を基準」にすること―面倒な「優位に立ちたい人」を、ひらりとかわすコツって?

暮らし

更新日:2017/10/17

『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』(石原加受子/学研プラス)

 大して欲しくないものを「あなたこういうの、好きだと思って」と渡された際、本当はいらないのに「断ったら悪いな」と思って、受け取ってしまったことはないだろうか? それに「いらない」と言ってしまうと、相手が豹変して「この恩知らず!」と怒り出すかもしれない。だったら自分が我慢すれば、すべて丸く収まる。こう考えてしまったこともないだろうか?

 「相手に気を使う」という正しいことをしているはずなのに、ちっとも幸せを感じない。それどころか常に、誰かに振り回されてしまう。こんな悩みを抱えている人のヒントになりそうなのが、『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』(石原加受子/学研プラス)だ。

 同書は「私、○○大卒だけど、あなた、どちらのご出身でしたっけ?」と聞いてくる格付けちゃんや「あなたのために」のような優しさの押し売りくん、「うるさい! 口答えするなッ。お前は言われたとおりにすればいいんだよッ!」という高圧型や、「やってくれるのが当然」と言わんばかりの依存型を、

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・人間関係の勝ち負けにこだわる「脳幹タイプ」
・優しさの押し売りで優位に立つ「感情脳タイプ」
・否定で相手を支配する「左脳タイプ」
・要求しながら相手を支配する「右脳タイプ」

 と分類し、それぞれの攻撃傾向について詳しく解説している。そのうえでどう距離を置けばいいかについての、アドバイスが掲載されている。

 たとえば家を出ようとしたタイミングで「あれ、どうなっていたんだっけ?」とわざわざ尋ねてきた家族にイライラさせられたら、「出かけるときに言われても答える余裕がないんだ。悪いけど、帰ってからにするね」ときっぱり断ることを、著者である石原加受子さんは勧めている。ただこれはその場で言うのではなく、別の時間に改めて言い、相手の言葉に反応せず宣言通りに実行することで、煩わされないようになるそうだ。ほかにも振り回されない方法として「具体的に気持ちを言葉で伝える」「その場から立ち去る」などが紹介されているが、いざ実践したくても相手が上司や家族の場合、「怒って嫌がらせをされたらどうしよう」「がっかりさせたり、悲しませたりしてしまうかな」と、躊躇してしまうこともあるかもしれない。しかし石原さんは

自分中心にならない限り、自分の守り方はわかりません
自分の心を基準にして初めて、自分の守り方がわかるのです。

と、すべてのケースにおいて相手ではなく、自分の心を中心に考える大事さを読者に伝えている。

 相手に対して恐怖や遠慮があったり、また「こんなことを言うと、和を乱すと思われて嫌われないだろうか」と、他者を中心に物事を考えてしまったりすることこそが、相手を支配し、優位に立ちたい人を引き寄せてしまうことに繋がるという。

 とはいえさんざん「人に迷惑をかけるな」「空気を読め」「和を以て貴しとなす」と言われながら育ち、チームワークを大事にする日本社会にどっぷり浸っていたら、自分中心に物事を考え、発言するのは難しいかもしれない。だが石原さんは、

自分の心を感じ取れば相手の心がわかるし、自分中心になって、自分の“感じ方”の精度を高めていったほうが、はるかに相手のことを知ることができる

 と語っている。判断の基準が自分ではなく他者になると、ルールや規則、常識などに縛られ、自分の行動も相手の気持ちや社会の評価に左右されてしまう。そして自分の人生に絶えず不満や不安を抱えてしまい、不自由な世界に生きることになってしまうことを、この本は教えてくれる。

「なぜ私はこんなに我慢して怒らないようにしているのに、いつもマウンティングされてしまうのだろう?」と思っている人は、自身の判断基準をどこに置いているかについて、見直してみるといいだろう。それが「相手を怒らせないようにまるく収めること」だったり「周りの空気を悪くしないこと」だったりしたら、まさに他者が中心だ。それでは環境や人間関係が変わったとしても、また優位に立ちたい人の餌食にされてしまうことだろう。そんな自分を変えたい、変わりたいと思ったら、まずは手に取ってほしい。

文=霧隠彩子