年商2億の「塚田農場」元ハイパー店長が説く!「バイトを大事にする店」が必ず繁盛する理由とは?

ビジネス

2017/9/29

『バイトを大事にする飲食店は必ず繁盛する』(幻冬舎)

 飲食業界は苦境に立たされている。長い不況が続いた結果、美味しくてリーズナブルな料理を提供することが必須条件となり、利益をギリギリまで削った上で上質なサービスを提供する経営努力を重ねたり、「飲食業界=ブラック」という図式が常識になってしまった結果、正社員やアルバイトの人材獲得が難しくなったり、業界全体で頭を抱えている印象を受ける。特にアルバイトに関しては、時給を上げても人手が集まらない状況にあり、まさに採用不況といっても過言ではない。

 そんな中、顧客の高いリピート率とアルバイトの高い定着率を誇る会社がある。「塚田農場」などを経営するエー・ピーカンパニーだ。飲食業界が採用不況にあえぐ中、なぜ塚田農場にはアルバイトが集まるのか。その理由についてエー・ピーカンパニーの副社長である大久保伸隆氏が『バイトを大事にする飲食店は必ず繁盛する』(幻冬舎)で語っているのでご紹介したい。

■アルバイトと売り上げの関係

 本書で大久保氏は以下の図式を挙げている。

 CIS=EIS=売り上げ

 CISとは「お客様感動満足」。EISとは「従業員感動満足」のことだ。大久保氏は「お客様感動満足」と「従業員感動満足」なくして売り上げは伸ばせないと断言している。

 経営は売り上げ、つまり顧客なくして成り立たない。そして経営の基盤である組織は、従業員なくして成り立たない。よって、売り上げを伸ばすには、顧客に喜んでもらえる行動のできる従業員が不可欠。つまり接客の大部分を占めるアルバイトが「顧客に喜んでもらえる行動のできる従業員」になることこそ売り上げアップの条件となるのだ。

■「経済的報酬」と「精神的報酬」

 そのためには「従業員感動満足」が必須となってくる。大久保氏によると、「従業員感動満足」を満たすためには「経済的報酬」と「精神的報酬」が必要となってくるという。「経済的報酬」とは時給である。普通の発想ならば「従業員感動満足を満たすため時給を上げとけばいい」と思いがちだが、大久保氏はこれだけではダメだと語る。「経済的報酬」と「精神的報酬」がバランスよく満たされている状況が、アルバイトが辞めない状況へとつながるのだそうだ。

 では「精神的報酬」とは何だろうか。それは「やりがい」や「達成感」のこと。そしてそれを感じることができるのは、顧客から「ありがとう」と言われる瞬間だ。大久保氏は塚田農場のある店舗を年商2億円の超繁盛店にしたハイパーすぎる店長経験がある。だからこそ顧客から「ありがとう」を言われたときのアルバイトの喜びの感情を知っているのだ。

■顧客から「ありがとう」をもらう仕組み

 では、どうやってアルバイトが顧客から「ありがとう」をもらえるようにするのか。大久保氏はそのために仕組みを考えた。

・卓担当制

 「卓担当制」とは、スタッフに決まったテーブルを持たせる仕組みのこと。自分の卓の顧客のサービスは自分でやる欧米のチップ制と同じシステムだ。これによって責任の所在と成果が本人に見えるようになるので、やる気につながるという。

・店内販促

 繁華街に出かけたとき、店の前で従業員が呼び込みをかける「店外販促」は読者も見かけたことがあるだろう。大久保氏は、すでに来店している顧客にもっと塚田農場を気に入ってもらうため、「店内販促」を始めたそうだ。塚田農場に興味があるかどうか分からない顧客に「いかに来店してもらうか」という途方もない努力をするより、すでに興味があって来店している顧客に「塚田農場をもっと好きになって帰ってもらう」という努力をすべきと考えたのだ。その結果、リピーター獲得につながっているという。本書では、顧客の携帯電話の裏に塚田農場のシールを貼ったり、塚田農場が提供する料理を一層美味しくする調味料を配ったり、様々な店内販促が紹介されている。

 これが顧客に「ありがとう」を言わせるきっかけになり、それがアルバイトのやる気を引き出し、その結果、お客様感動満足につながり、そして売り上げアップにつながるのだそうだ。まさに「CIS=EIS=売り上げ」だ。

 筆者も大学生の頃、居酒屋でアルバイトをした経験がある。19時を過ぎると店は客でごった返し、まるで戦場のようになった。居酒屋で働くということは、シラフでまともな客が次々と酔って面倒な客に変わる状況と戦い続けることだ。字面にしてはじめて分かるこの狂気。辞めたくなる感情がわくのも無理はない。だからこそアルバイトを管理する店長の手腕が試される。その結果が店の繁盛へとつながる。飲食業界の関係者や飲食業界に興味のある方は本書を手にとって損はないだろう。

文=いのうえゆきひろ