カップル間の「モラハラ」はなぜ起こるのか…愛してる? そんなの愛じゃない?

恋愛・結婚

2017/10/31

『モラルハラスメントあなたを縛る見えない鎖』(リサ・アロンソン・フォンテス:著、宮家あゆみ:訳/晶文社)

 夫婦間やパートナー間のもやもやしたものを、他の人にわかってもらうのは難しい…と思ったことはないだろうか。浮気や借金などの明らかなものならともかく、会話の内容や相手の態度については、「気にしすぎなんじゃない」「よくあることだよ」と返されておしまいになってしまう。相手との話し合いもうまくいかないし、誰にもわかってもらえない。こんなときにはどうすればいいのだろうか?

 問題解決を目指すうえで、疑うべきもののひとつは、モラルハラスメントだ。略してモラハラ。意味は、日常的に批判され侮辱され支配されていることで、いわば精神的虐待のことだ。職場などで行われることもあるが、最も気づかれにくく、かつ解決が難しいのが、パートナー間に起こるモラハラだという。あからさまに相手にけなされているのならば比較的気づきやすいのだが、なかにはその言動を愛情だと思って無意識の内に我慢してしまい、被害者本人が気づいていない例もある。

 クレイグは妻のルースに対して「君はいつも忙しすぎる」「リラックスする方法を学ぶべきだ」と繰り返し言う。そして、ルースを自分の隣に座らせ、長時間そのままでいることを強要する。その間クレイグは本を読んだりネットを見たりしているというのに。不満を述べても、「僕は君を気づかっている」「君に一番良いことを知っている」と説得され続けたルースは、時間が経つにつれクレイグの指示を受け入れるようになっていった―。

『モラルハラスメントあなたを縛る見えない鎖』(リサ・アロンソン・フォンテス:著、宮家あゆみ:訳/晶文社)は、愛しあっているはずの2人の間になぜモラハラが起こるのか、またなぜモラハラが起こるような不快な関係にもかかわらず、2人は関係を続けてしまうのかに踏み込んだ一冊。本書から、男性が加害者、女性が被害者のケースについて、その心の内側をみていきたい。

■ジェンダーロール(性別役割)

 私たちは幼いころから、男の子らしくとか、女の子らしくとかいう言葉や教えにさらされる。例えば、男の子は元気なくらいでちょうどいいと多少の乱暴を許され、女の子は愛想よく優しくいることで褒められるなどだ。成長する上で、こうした刷り込みが影響を与えないと言い切ることはできない。

■精神的な未熟さ

 しかし、こうしたジェンダーロールは、ある程度は仕方がないことなのかもしれない。わざと役割分担させるのはいけないが、悪意なく世間から降り注ぐこともあろう。では、皆が同じ程度の性別役割を与えられるとして、モラハラを行う人間と行わない人間がいるのはなぜなのか。本書によるとそれは、精神的な未熟さゆえだという。弱い人間は、自分自身の力を確認するために、身近な相手を支配しようとする。外では上司に尻尾を振っておきながら、家では妻に怒鳴り散らす夫などが典型だろうか。こうした例は、女性の自尊心を奪うことで、男性が自分の力を取り戻して心の安定を得ているのだという。

■愛情だと思ってしまう

 一挙手一投足まで管理されているような不安、必要以上に相手の機嫌を気にしなければならない拘束感。こうしたストレスを感じているにもかかわらず、女性が男性と積極的に別れようとしない例は意外にも多い。なぜなら、男性の執拗な支配と執着を、女性が愛情だと思ってしまうからだ。ストレスで傷つけられた状態で、優しい言葉で説得される場面を想像してみてほしい。その言葉は、砂漠を旅する人にとってのコップ一杯の水のようにありがたみを増すだろう。そしてその状態が長く続くにつれ、女性が男性に服従することが当たり前になり、欲求を抑え込むようになっていく。社会的には孤独で不自由になっているにもかかわらずだ。

 無意識にコントロールされ、またはコントロールしてしまうのが恐ろしい、モラルハラスメント。ストレスフルな間柄なら、パートナーの関係を解消すればいいだけのことなのだが、それができない、自分のことかもしれないと思ったら、専門家への相談をためらわないでほしい。相談は女性センターや自治体などで受け付けている。お互いを尊重しあえる関係と自身の自由を手にする権利は誰にでもあるはずだ。

文=奥みんす