モネは人の顔を描くのが苦手だった? ヴィーナスの乗ったホタテ貝は転覆寸前? 名画に隠された真実

エンタメ

2017/11/4

『名画の本音~名画は嘘をつく3(ビジュアルだいわ文庫)』(木村泰司/大和書房)

 モネ、ルノワール、ルーベンス…おなじみの名画には、実は裏話があった。知ると、より美術鑑賞が楽しくなる一冊『名画の本音~名画は嘘をつく3(ビジュアルだいわ文庫)』(木村泰司/大和書房)。木村泰司氏は、講演、執筆を多数手がける新しい西洋美術界のエンターテイナーとして、今最も注目を集める美術史家である。美術関連のテレビ番組で最近よくお見かけするスキンヘッドの、あの方である。

 本書はそれぞれのテーマに分かれた10章構成で、ゴッホ、ルノワール、ピカソ、ゴーギャン、レンブラント、ルーベンスなど、名だたる画家たちが絵にこめた「隠されたメッセージ」を繙いていく。文庫本サイズながら、作品はすべてカラー写真という、プチ画集的なゴージャスさ! 125点の中から、いくつかご紹介しよう。

■第1章 タイトルの誤解

・モネ《印象、日の出》

 展覧会の図録制作時に、「日の出」だけではシンプルすぎると批判され、モネが急遽付け加えた「印象」ということば。保守的な官展(サロン)の批評家が皮肉をこめて「印象派たちの展覧会」と名付けたことで、「印象派」が誕生した。日本でもファンの多い「印象派」のルーツとして覚えておきたい作品だ。

・ゴッホ《ルーラン夫人 ゆりかごを揺らす女(子守唄)》

 筆者は「ボストン美術館の至宝展」で本作品を見たばかり。ゆりかごが描かれていない、なぜ紐だけなのか? そこには自らの耳を切り取ったゴッホの切ない魂の救済がこめられていたのだ。見る前に知っておきたかった!

・ゴーギャン《タヒチの三人》

 南国の人々の姿に魅了されて描いた作品だと思っていたが、キリスト教的世界観「エデンの園」がテーマ。西洋美術を理解するためにはキリスト教を理解する必要があるのだ。

■第2章 モデルのトリック

・モネ《日傘の女》

 3枚ある日傘の女。顔がはっきり描かれていないので同じモデルに見えるが、実は前妻と義理の娘。顔の描写が曖昧なのは、風景画家のモネは、顔を描くのが得意ではなかったから、とはビックリ!

■第8章 ありえない設定

・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》

 お馴染みの、貝殻の上に立つ愛と美の女神ウェヌス(ヴィーナス)。よく見ると貝殻の真ん中ではなく先端に立っている。これでは転覆してしまう! 不可能が可能になるのは天上界であることを示しているのだ。

■第9章 家族たちの偽り

・マネ《温室にて》

 冷たくぎこちない雰囲気が漂う夫婦。仮面夫婦? と思いきや、これはブルジョワジーの節度あるクラス感なのだそう。あからさまな愛情表現を好まなかった当時の上層ブルジョワジーの様子を知ることができる。

 本書を読むと、絵画の見方がわかってきて、おのずと美術史の流れや、描かれた当時の社会情勢にまで興味が広がってくる。美術展巡りをしたくなること間違いなし! の一冊だ。

文=泉ゆりこ