世界トップのスポーツブランド「ナイキ」はいかにして生まれたのか!? 波瀾に満ちた秘話を明かす創業者自伝『シュードッグ』
更新日:2018/11/12

1962年のある朝、アメリカのオレゴンで24歳の青年がランニング中に自分の“馬鹿げたアイディア”の実現をふと確信する。それは日本のランニングシューズの販売会社を立ち上げてアメリカで売ること。青年の名前はフィル・ナイト。後に世界でもっとも有名なスポーツブランド“NIKE”の創業者となる男。そして、この“馬鹿げたアイディア”がその出発点だった。
『SHOE DOG(シュードッグ)』(フィル・ナイト:著、大田黒 奉之:翻訳/東洋経済新報社)はナイキ創業者フィル・ナイトが自らの半生を振り返り、1962年の起業から1980年のナイキ株式上場に至るまでを綴った自伝。ナイキ創業をめぐる波瀾と熱狂に満ちた壮大な物語だ。
ナイトは日本の会社「オニツカ」(現・アシックス)が作るランニングシューズ「タイガー」に魅了され、それをアメリカで売るというアイディアを思いつくのだが、そもそも当時はランニングやジョギングという文化そのものが現在のように一般的なものではなかった。しかし、ナイトは「私は走ることを信じていた。みんなが数マイルを走れば、世の中はもっと良くなると思っていたし、このシューズを履けば走りはもっと良くなると思っていた」という。この信念を胸に彼はひたすら突き進んでいく。
まずナイトは長い世界旅行の途中に日本に立ち寄り、神戸にあるオニツカのオフィスで売り込みをするのだが、その時点で彼にはビジネスの経験も自分のオフィスもなかった。それでも、その場しのぎに自分は「ブルーリボン・スポーツ社の代表」というはったりをかまして、オニツカ・タイガーのアメリカ西部での独占販売を申し入れて300足を発注してしまう。全編にわたって、こうしたナイトのエネルギッシュな行動力、揺るぎない信念、仕事にかける熱狂ぶりが怒涛にように伝わってくることが、本書の何よりの魅力だろう。
オニツカとの出会いから訴訟を経ての決別、ナイキブランド誕生の経緯、自転車操業の会社経営と資金繰りのピンチ、銀行による資産凍結とFBIの介入、総合商社・日商岩井(現・双日)がナイキ救済に果たした大きな役割、米国関税局が突きつけてきた2500万ドルの関税請求――ナイキの物語はドラマチックかつスリリングな出来事の連続で、まさしく波瀾万丈。次々と襲いかかる窮地をナイトは個性豊かな創業メンバーたちと「根っからの負け犬でも、力を合わせれば勝つことができる」と信じて乗り越えていく。
本書を読むことで何かすぐに実践できる具体的なビジネステクニックが身につくということはないかもしれない。「成長するか死ぬしかない」と、ひたすらに走り続けた彼の生き方は簡単に真似できるものではない。ただ、フィル・ナイトという人物の率直で誠実な言葉の数々、歩んできた道のりは、きっとすべての働く人々の心に熱い火をつけることになるだろう。「私たちにとってビジネスとは、金を稼ぐことではない」とナイトはいう。では、ナイトにとってビジネスとは何なのか、読者にはナイトからの答えが届き、そこにナイキを創業した人物ならではの人生哲学が見えてくるはずだ。
文=橋富政彦
レビューカテゴリーの最新記事
今月のダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチ 2025年5月号 BLとKISS/『薬屋のひとりごと』が秘めた謎
特集1言葉よりも雄弁に──多彩な表現に溺れる BLとKISS/特集2 TVアニメ第2期2クール目放送開始! 『薬屋のひとりごと』が秘めた謎 他...
2025年4月4日発売 価格 880円
人気記事
-
1
草彅剛「これまでの全ての楽曲は血となり肉となっている」。グループ解散から地上波復帰までをポジティブに振り返る【『Okiraku 3』インタビュー】
-
2
-
3
-
4
魔王様の夢は…全人類を支配下にして、職場環境を改善すること!? “魔王軍は実はホワイト企業”というユニークな設定になった理由【著者インタビュー】
-
5
満田拓也 『MAJOR』は海堂高校戦を最終回のつもりで描いた。幼稚園編から茂野吾郎プロ復活の可能性まで連載20年を振り返る【『MAJOR 2nd』インタビュー】
人気記事をもっとみる
新着記事
今日のオススメ
-
インタビュー・対談
江戸城で尾長鶏「家康」の密室殺“鳥”事件が発生! ミステリー作家・森晶麿の激ヤバ小説が読める投稿サイト「ネオページ」とは【インタビュー】
PR -
レビュー
運命の人はすぐそばに! イケメン幼なじみからの突然のプロポーズに翻弄される、激甘ラブロマンス【書評】
PR -
レビュー
「大きいのに泣いてる」周囲よりも大きい子どもへの心無い言葉。自信を失いかけた少女が「ありのままの自分を愛する」ことを知る絵本【書評】
PR -
レビュー
「5倍速家事」を実現するためのテクニックを紹介!自分時間を作るために、時短のプロが「あえてやめる家事」とは?【書評】
PR -
レビュー
終活ではなくピンチを乗り越える“ピン活”を! 泉ピン子が逆境だらけの半生で獲得した思考法
PR
電子書店コミック売上ランキング
-
Amazonコミック売上トップ3
更新:2025/4/6 01:30-
1
片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~ 7 (ヤングチャンピオン・コミックス)
-
2
葬送のフリーレン(14) (少年サンデーコミックス)
-
3
薬屋のひとりごと 15巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
-
-
楽天Koboコミック売上トップ3
更新:2025/4/6 01:00 楽天ランキングの続きはこちら