ヒートテックの暖かい秘密とは? 栄養ドリンクの疲労回復は勘違い? 身近な「科学」の疑問に答えます!

スポーツ・科学

2017/12/14

『身近にあふれる「科学」が3時間でわかる本』(左巻健男/明日香出版社)

 時代が進むごとに毎日の生活は便利になっていく。スマホもパソコンもエアコンも電子レンジも、すべて「科学」が「便利」という姿に変えて、私たちの生活を豊かにしている。『身近にあふれる「科学」が3時間でわかる本』(左巻健男/明日香出版社)は、そんな日常にあふれた「科学」をヒジョーに分かりやすく解説している。本記事ではこのうち3種類の「科学」についてご紹介したい。

■洗濯洗剤が汚れを落とす仕組み

 汚れた洗濯物を洗うとき、ついつい洗濯洗剤を多めに入れがちだ。しかし洗剤にも適量というものがあり、多すぎても少なすぎても期待する効果が得られない。まずは洗濯洗剤の科学を見ていこう。

 そもそもなぜ洗濯洗剤が必要なのかというと、水と油ははじき合う性質を持っており、衣類についた油性の汚れ(=皮脂や食品などの汚れ)は、水だけではきれいに落ちないからだ。そのため水と油をなじませ、衣類から油性の汚れを引きはがす「界面活性剤」という物質が活躍する。

 界面活性剤はマッチ棒のような形をしており、油になじむ「親油基」(=棒の部分)と水になじむ「親水基」(=頭の丸い部分)に分かれている。親油基が油汚れに近づくと、次々と汚れにくっついて取り囲む。一方で親水基は、水と結びついて汚れや繊維のすきまに水がしみこむように働き、汚れを衣類から引きはがす。汚れは界面活性剤に覆われているため、衣類に戻ることができなくなるのだ。ピンポン玉(=汚れ)にマッチ棒を突き刺したものをイメージすると分かりやすいかもしれない。

 界面活性剤はある濃度に達すると、親油基同士がくっついて「ミセル」という集合体を作る。ミセルは内側に汚れを取りこむため、増えた分だけ洗浄力も高まる。しかし一定の洗剤濃度を超えてしまうと、どれだけ洗剤を入れても効果はほとんど変わらなくなる。汚れの中には界面活性剤の働きでは落ちない汚れもあり、どれだけ界面活性剤を増やそうが、汚れを取りこめないミセルを増やしてしまうだけになるそうだ。そのため洗剤のパッケージに表記された適量を守ることがベストだという。

■ヒートテックの暖かい秘密

 冬になると大活躍する「ヒートテック」。この薄くて頼もしい衣料に隠された科学を解き明かすためには「凝縮熱」という現象と人間の体の仕組みを理解する必要がある。

 私たちは皮膚が水でぬれたとき、涼しく(あるいは寒く)感じる。これは液体が気体になるときにまわりから熱を奪う「気化熱」という現象が働いているため。これとは反対に、気体が液体になるときは熱を放出する「凝縮熱」という現象が働く。

 また、人は常に体から水蒸気を発散させている。成人男性ならばその量は1日に約0.55リットル。これは自然に出ているもので、運動したときや夏の時期に流れ落ちる汗とは違う。ヒートテックはこの体の仕組みと凝縮熱を利用している。

 ヒートテックには「吸湿発熱繊維」という素材が使われている。その名の通り、水分を吸収して発熱する繊維のことで、人の肌から出る水蒸気を吸収し、それが液体の水になることで熱を発生させているのだ。

 さらに、セーターや毛布と同じように、繊維と繊維の間にできるエアポケット(=空気の層)によって断熱効果を発揮し、発生させた熱を外に逃しにくくする工夫もされている。これがヒートテックの暖かさの秘密だ。

■栄養ドリンクの効果

 2017年も師走に入り、連日の仕事や飲み会で疲れ切っている人も多いだろう。そんなとき頼りにしたいのが栄養ドリンク。しかしこの液体にはどれほどの効果があるのだろうか。本書では「肉体疲労時」に利用する栄養ドリンクについて解説している。

 栄養ドリンクに必ず含まれているビタミンB群。この栄養素は、摂取した糖質やたんぱく質の代謝を助け、エネルギーを効率よく取り出すために必要なもの。疲れたときに食べたいレバーやうなぎに多く含まれている栄養素でもある。

 ちなみに、人が1日に必要とするビタミンB群の量は数十ミリグラム程度。栄養ドリンクを飲むと、むしろ過剰摂取になることが多いらしい。ビタミンB群は水に溶けやすい性質を持っているため、摂りすぎた分は尿として体外に排出されるので心配ないそうだ。しかし過剰摂取になるくらいならば、毎日レバーを食べた方が体に良い気がするのは筆者だけだろうか。

 また、カフェインは、覚醒・強心・利尿・解熱鎮痛などの作用を持っており、とりわけ覚醒作用と強心作用を期待されて栄養ドリンクに入れられている。覚醒とは、目が覚めたり、意識をはっきりさせたり、興奮させることをいい、疲れた体に効くときもある。しかしこれはあくまで薬効なので、極端にいえば「勘違い」に近く、根本的な疲労回復とはいえないそうだ。本書を読む限り、栄養ドリンクの効果には疑問が残る。

 私たちの日常は便利になる一方だが、それと同時に「なんだか分からないけど便利なもの」が増えていっているように感じる。今や生活必需品となったスマホも、家中の家電を結びつけるIoT技術も、仕組みを完璧に説明できる人はわずかだ。それが悪いわけではないが、知らないまま当たり前のように享受するのもいかがだろうか。たまには「日常にあふれる得体の知れない科学」に興味を示してみるのもいいかもしれない。

文=いのうえゆきひろ