「アトピー治療」のコツとは? 卵や牛乳、食べちゃダメは本当? 国立成育医療研究センターの最新研究結果を紹介!

健康・美容

2017/12/25

『子どものアレルギー アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・ぜんそく』(五十嵐隆:企画/文藝春秋)

「卵や牛乳はアレルゲンなので食べてはいけません」。食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、ぜんそく。これらのアレルギー体質のお子さんは、アレルゲンとなる食べ物を除去するように言われた経験が一度はあるでしょう。

 でも最近は、血液検査の結果、アレルギー反応は陽性でも、食べて症状が出ないのであれば、除去しなくてもいいと言うお医者さんもいます。

 はたしてどっちが正しいのでしょうか。

■成功率No.1病院が教える極意

 なぜ医療現場で混乱が起こっているのでしょう。その理由を、『子どものアレルギー アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・ぜんそく』(五十嵐隆:企画/文藝春秋)を編監修した医師の大矢幸弘さんは、このように説明します。

「今世紀に入ってからのアレルギー研究は著しいものがあり、20世紀の常識がひっくり返るような変化が押し寄せています。特に小児アレルギーの世界では、医療現場の常識が大きく変化しています」

 大矢先生は、国立成育医療研究センターで、生体防御系内科部アレルギー科医長を務めています。そしてこの国立成育医療研究センターは、「アレルギー治療、成功率No.1病院」とも言われています。

 この病院では、最新研究とエビデンスに基づき、子どものアレルギーの発症率を大幅に下げています。なかでも食物アレルギーの成功率は著しく、卵アレルギーの予防に関する臨床研究に参加した子どもの発症率を約8割も減少させているのです。

 最新の研究と臨床治療から見えてきた、「本当に正しい」アレルギーへの対応。その一部をご紹介します。

■アレルギーには2種類ある

 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、ぜんそく、これらは「アレルギー」と一括りにされていますが、実は2種類に分けられます。

1.即時型反応=IgE抗体が発生
2.非即時型反応

 血液検査で分かるのは「1」の即時型反応です。アレルゲンを食べて、息が苦しくなったり、発疹が出たりするのは、このタイプです。一方、血液検査で見つけられないのが、「2」の非即時型反応です。原因物質に触れて、数時間後から数日間後に症状が現れます。

 化粧品や金属などによる皮膚のかぶれ、胃腸の荒れによる嘔吐や下痢(消化管アレルギー・好酸球性胃腸炎)、などは、この「2」のタイプとして現れます。

■反応が出すぎて何を食べさせたらいい?

「1」の検査結果が出た場合、その食品を食べなければいいのだから、カンタン! そう思ってはいけません。実は「1」のIgE抗体は、幅広い物質に反応することがあります。

 ある子どもは、血液検査で「牛乳・卵白・大豆・小麦・米・トマト・ジャガイモ」などに反応が出ました。しかし、これでは「何を食事で出したらいいのか分からない!」、そうショックを受けてノイローゼになる親御さんもいます。

 けれども、そのお子さんに「食物経口負荷試験」、すこしずつアレルギーの原因と考えられる食品を医師の監視のもとで食べてもらい、反応を診る試験をしました。すると本当に食べてアレルギー症状が出るのは、「牛乳・卵」の2種類のみだったことが分かりました。

 なぜ血液検査と経口負荷試験の結果が違うのでしょう?

 ひとつは、IgE抗体は「比較的大きなタンパク質」に反応するからです。消化され、小さくなったタンパク質には反応しないことがあります。また、症状をおこさない程度の「少量を時間をかけて食べる」と、アレルギーを抑制する免疫が発動することがあること。そして、人によって、「症状が出る量」が違う、ということなどが挙げられます。

 だから、血液検査で反応が出たすべての物質を除去しなくても大丈夫なのです。

■乳児の「肌」を守るのがカギ! アトピーの4大要素はこれ!

 アレルギーの出発点としてもっとも重要だと考えられているのが、「皮膚のケア」です。

 皮膚が乾燥したり、皮膚炎を起こしていたりしてバリア機能が落ちると、外部からの刺激に免疫細胞が反応しやすくなるからです。赤ちゃんのうちに、しっかりと保湿することが大切です。

 そうは言っても、すでにアレルギーを発症してしまっているお子さんもいらっしゃるでしょう。その場合はどうすれば良いのか。

 特に困るのが治療の情報があふれかえっている、「アトピー性皮膚炎」。科学的根拠に基づく最新の治療法を紹介します。

 まず原因について。皮膚のバリア機能が低下して、さまざまな刺激に反応してしまうことが挙げられます。バリア機能が低下する原因のひとつが、遺伝子変異ですが、そのほかの原因についても、世界中の研究者がいまも調べているといいます。

 では、何が症状を悪化させるのか。国立成育医療研究センターでは、主たるものは、ほぼ特定できています。次の4つがアトピー性皮膚炎の天敵です。

●アトピーを悪化させる要因

・黄色ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌は大丈夫です)
・放置した汗(汗はかいた方がよいが放置すると刺激になる)
・チリダニ(ヒョウダニ)
・カビ(汗に含まれるマラセチア、室内で繁殖する各種のカビ)

 このほかにも、花粉・ペットのフケや唾液なども原因と考えられます。ですが、治療のスタートは、この4項目をまず除去することだそう。住環境を見直す、お布団をこまめに干す、掃除機をかけるなど、家の中やお肌を清潔に保つ努力が必要です。薬物治療だけに頼らず、「悪いものを寄せ付けない」のが大事なんですね。

■アレルギーは子どもの身長にも影響

 さらに本書には、アトピーだけではなく、食物アレルギーやぜんそくの最新治療や予防法も紹介されています。いずれも共通していることは、症状が出たら「早く」正しい治療を開始することです。なぜならアレルギーは、見た目の症状以外にも、子どもの発育に関係します。例えば、かゆみや咳で、充分な睡眠が取れない場合。睡眠時に分泌される成長ホルモンが少なく、身長の伸びに影響します。

 このほかにも、家庭や学校での生活で出くわす数々の疑問があるでしょう。それも同書ではQ&Aで解説しています。

 お子さんのアレルギー治療に悩む方、これからお子さんを育てるにあたり、予防法を知っておきたい方。そして、医療従事者や保健関係者にもおすすめの一冊です。

文=武藤徉子