ちびまる子ちゃん好きは絶対に読むな! さくら本人が描いたパロディ『ちびしかくちゃん』がマジで怖い件

マンガ

更新日:2018/2/5

『ちびしかくちゃん』(さくらももこ/集英社)

 さくらももこの『ちびまる子ちゃん』。誰もが知っているこの国民的漫画を、さくら自身がパロディとして描いたのが『ちびしかくちゃん』(さくらももこ/集英社)だ。この作品に『ちびまる子ちゃん』の、ののほんとした世界観を期待するのは的外れである。なぜなら主人公以外のキャラクターの性格がとてつもなく悪いのだ。

 主人公はしか子、小学3年生。見た目はまる子そっくりだが、顔が四角く、気弱な正直者だ。友達のだまちゃんは、たまちゃんのパロディ的存在なのにびっくりするほど性格が悪い(しかも顔もたまちゃんより可愛くない)。遅刻してきたしか子を「グズ」と呼び、遅刻の理由をつくったしか子のお母さんを「ゴミ」と罵り、しか子はオロオロしながら泣くばかり。さらには、事の顛末を話すしか子に対し「あたしゃしか子のせいでサイテーでゴミな母親になったんだよ」と怒り出すお母さん。しか子の周りには、こんな感じの口の悪い人だらけである。

 設定だけ聞くとズーンとなる話のように思われるが、それが意外とそうでもない。1話がたった5ページでさくっと読める。しかも起こるのは、しか子が200円をなくしてしまったり、好きでもないクラスメイトと噂されたりと「しょーもな(笑)」と笑えてしまうようなことばかりである。そこに口の悪いキャラクターが続々と畳み掛けてくるのだ…。

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 しかし、どうしてしか子にばかり嫌なことばかり起こるのだろう。いつも他人に気をつかって生きているしか子。もし、しか子がリアルに存在したら、ただの「いい子」で済まされていたかもしれない。だが欲望を包み隠さずにわがまま放題の『ちびしかくちゃん』の世界では、しか子の性格があぶり出される。他人への配慮など通用せず、自分の意見がないしか子はどんどん窮地に追い込まれていく。

「もしかして、しか子ってコミュニケーション社会で右往左往する現代人の象徴?」と思うと、ちょっと身震いがした。もちろんだまちゃんのように生きていくことはできないけれど、その黒さにクスリとできるぐらいは自分の黒さを認めてもいいのかもしれない。社会で気をつかいすぎて自分を見失いそうな時、『ちびしかくちゃん』のダークな奴らに元気をもらうのも、アリですよ。

文=寺田真央