年収600万円未満の夫を持つ専業主婦は「好きの搾取」!? 『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』

恋愛・結婚

2018/1/10

『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(白河桃子、是枝俊悟/毎日新聞出版)

「平成29年日本民間放送連盟賞番組部門テレビドラマ番組」最優秀賞受賞、12月31日・1月1日には全話一挙放送、など最終回から1年以上経った現在も人気が衰えない『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、逃げ恥)。まだまだ続編を望む声が多いようだ。

 逃げ恥の設定を現実世界に当てはめて考えると、一体どうなるのだろうか? 経済学の観点から、この疑問を読み解くのが『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(白河桃子、是枝俊悟/毎日新聞出版)。新しい結婚観を見せた逃げ恥を題材にして、家事労働の経済価値や育児、現代日本の結婚事情を読み解く一冊となっている。本稿では、本書の家事労働についての記述を一部紹介したい。

 ドラマ・逃げ恥は様々な魅力があった。主人公のみくり・平匡のくっつきそうでくっつかないモヤモヤした距離感、みくりの伯母・百合と17歳年下の風間の恋愛模様、所々にちりばめられた他番組のパロディの数々、EDの“恋ダンス”などだ。

 そして、最も大きな人気の一つに「契約結婚」というみくりと平匡の関係があったはず。契約結婚とは、表向きは入籍している夫婦を演じているが、夫を雇用主、妻を従業員として家事労働に給料を支払うもの。初めは恋愛感情がなく契約結婚に踏み切った二人が徐々に惹かれ合う…というのが主な流れだ。

 ストーリー内でみくりが平匡から提示された条件は以下の通り。

(1)給料は月19.4万円(家賃・光熱費・食費は折半のため、手取りは9万1500円)
(2)1日7時間労働のフレックスタイム制
(3)土日祝日は休み

 男目線で申し訳ないが、この条件はかなり厚遇であると感じる。そして、つい「平匡さんは月19万円払える高給取りなんだなぁ…」と考えてしまうものだ。もちろん、契約結婚ではない家庭の場合、専業主婦の勤務時間は24時間年中無休。単純比較はできないが、経済学の観点から見ると月19.4万円というのは理にかなっているそうだ。

 ところで、月19万円もみくりに払う平匡は得をしているのだろうか? 傍から見れば、ガッキーが一つ屋根の下で掃除・炊飯・洗濯をしてくれるのならば、むしろ安い(個人的には)。この疑問についても解説されている。

 家賃・光熱費・食費はみくりと折半、外食機会の減少、これまで支払っていた家事代行費、家族手当の支給などを計算すると、共同生活を送ることで、月2万円の支出減となるそう。ここまで計算のうえ契約結婚をスタートさせたのなら、平匡さん、恐るべしだ。

 そして、もう一つ。ドラマ内の「好きの搾取」という言葉が話題となった。これは専業主婦としての働きに対してフェアな対価が支払われないこと。つまりは“働き損”、善意で行われる“タダ働き”の状態だ。

 もし契約結婚ではなく、普通の専業主婦として家事に勤しむ場合、夫の年収はいくらであれば、搾取にならないのか、という計算も本書では紹介されている。

 詳細は本書をご確認いただければ幸いだが、専業主婦が「好きの搾取」状態を回避できるボーダーラインが年収600万円。そのラインであれば、ゆうに超えている――そう言える成人男性がどれほどいるだろうか。低いハードルではないはずだ。ちなみに夫の年収300万円未満であれば、専業主婦は最低賃金以下となってしまうそう。

 本書を読み終え、何よりも感じたことは、男は如何に女性に支えられているかということだ。家族を支えるために必要であるにもかかわらず、なかなか賞賛されない家事。本書を読めば、そんな家事を日々こなす奥さんの見え方がきっと変わるはずだ。

文=冴島友貴