発達障害のあなたの人生を輝かすために斯界の第一人者が教える 社会での働き方、職業選択のコツ

ビジネス

2018/1/16

『発達障害を仕事に活かす(朝日新書)』(星野仁彦/朝日新聞出版)

 本書『発達障害を仕事に活かす(朝日新書)』(星野仁彦/朝日新聞出版)のタイトルにもある「発達障害」という言葉をどこかで耳にしたことがある、という人も少なくないのではないだろうか。

 発達障害はいくつかのタイプに分類される。自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれ、これらは生まれつき脳の一部の機能に障害があるとされている。

 その一般的な特徴としては、「対人関係が苦手」「過剰なこだわり癖」「空気が読めない(周囲を困らせる)」「仕事・家事の段取りが苦手」等々が挙げられるが、いくつかのタイプの発達障害を併発、個人差が大きいという特徴もあるようだ。

 しかし、総じて「障害」と呼ばれるために「だから治らないのだろう」とか、「社会に適応しづらいに違いない」と思うかもしれないが、本書はそんな偏った先入観を排し、「多動」「衝動性」「過集中」といった発達のアンバランスも、その適性が職業と結びつけば想像を絶するプラスの効果をもたらすと、発達障害の活かし方を指南してくれる。

 著者自身も発達障害の医師で、40万部超のベストセラー『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社)を2010年に上梓。発達障害の実態により適するように意図から「発達アンバランス症候群」(凸凹症候群)と呼んでいる。

 著者によると、彼らは自分の特性を知らないがゆえに、他人に対しては「困らせる人」になって人を傷つけ、自分に対しても自分を傷つけ、追い詰めていることがある、という。それゆえ、専門的技術職に就いている人たちの中に発達の凸凹を持っている人が少なくないことを知れば、うつや依存症など二次的な症状で苦しむ当事者を支援することにもつながる、と述べている。

 本書はそのような観点から、第I章では大人の発達障害とはどういうものか、第II章では発達アンバランス症候群をどう見立て、どう活かしていけばよいか、第III章では発達アンバランス症候群の原因と対処法に関する専門性の高い最近の知見について解説している。

 もちろん、発達障害の医学的な定義についても詳細な説明がなされているが、実際にアスペルガー症候群やADHDなどと医学的に診断されても、「実態にそぐわないケースも多々ある」と著者はいう。

 その理由は、ひとくちに大人の発達障害と言っても障害の種類が幅広く、障害の現れ方もその程度や発達の段階によって大きく変わることがよくあるからだが、著者によると、このことを知らない医療関係者はまだまだたくさんいるし、その一方で「自分はADHDだ」といった思い込みによる自己診断も、かえって社会参加や社会適応を難しくさせるので注意が必要だと忠告する。

 このように、大人の発達障害に対する理解や認識が乏しい現状にあって、著者は独自の「星野式多軸診断」法を編み出すと共に、関心があることにとことん進んだり(過集中)、好奇心を持って(新奇追求傾向)何かを発見したりする(創造性)といった彼らのポジティブな傾向に注目し、自分の特性に合った職業を選ぶことを強く勧めている。

 ようするに、発達障害は「先天的なハンディキャップなのでずっと発達しない」のではなく、発達の仕方に生まれつきアンバランスがあるだけ。それを本人が自覚し、また周囲も彼らの凸凹のある発達の仕方を理解し、サポートすることによって、ハンディキャップになるのを防ぐだけでなく、「その人の特性や専門性を活かせる道が開ける」というわけだ。

 本書で、発達に凸凹がある著名人の例として挙げられているのは、漫画家のさかもと未明さんや作家の市川拓司さんらがアスペルガー症候群、女優の黒柳徹子さんや経済評論家の勝間和代さん、書道家の武田双雲さんらがADHD、女装家のミッツ・マングローブさんが学習障害で、現に彼ら自身がそれをカミングアウトしていて、それぞれの特性を活かして活躍していることは周知の事実だ。

 本書を読むことで、発達障害をネガティブにとらえるのではなく、ポジティブな側面に目が転じられ、職業選択の指針や仕事への活かし方を見出すきっかけになるだろう。もしかしたら、それが「生きづらさ」を感じているあなたの人生を輝かせるための処方箋となるかもしれない。

文=小笠原英晃