全員参加経営で実現する「強い組織」のつくり方とは? 『マンガでわかる 稲盛和夫のアメーバ経営』

ビジネス

2018/1/31

『マンガでわかる 稲盛和夫のアメーバ経営』(京セラコミュニケーションシステム:監修、綾瀬てる:画/マイナビ出版)

「アメーバ経営」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

『マンガでわかる 稲盛和夫のアメーバ経営』(京セラコミュニケーションシステム:監修、綾瀬てる:画/マイナビ出版)では、会社の内部を「アメーバ」に喩えた独立採算の小集団に分けて考える経営手法を、ストーリー仕立てでわかりやすく解説されている。

■会社組織を小集団に分けて考えるのが「アメーバ経営」

 アメーバ経営の最大の特徴は、会社の組織を「アメーバ」と呼ばれる独立採算の小集団に分け、それぞれのリーダーが経営者のようにそれぞれの集団を経営する考え方。日本を代表するカリスマ経営者・稲盛和夫氏が考案した経営手法だ。京セラの創業者である稲盛氏は、同社やKDDIでもこの経営方法を導入してきた。
 稲盛氏を、経営破綻したJALの再建を引き受けた人物として知った人もいるかもしれない。もちろんそのJALでもこのアメーバ経営を採用し、わずか2年8カ月で再上場というスピード回復させたことは、大きなニュースとなった。多くの企業経営を黒字に導いたアメーバ経営は、これまで700社を超える企業が導入して、成功を得ている。

■ストーリー仕立てのマンガで経営手法をわかりやすく解説

 名だたる一流企業で採用されているとはいえ、“経営手法”となると、ビジネスマンであっても実はあまり理解できていないというのも事実。恥ずかしながら筆者もまさにそうで、勤めていた会社でアメーバ経営が話題にのぼった時には「社長業のことなら、自分には別に関係ないなあ」と興味をほとんど持てなかった。
 こんな筆者のような経営の素人にも、ぜひ読んで理解してもらいたいのが、本書『マンガでわかる 稲盛和夫のアメーバ経営』だ。
 史上初となるマンガ形式のアメーバ経営入門書である本書は、ストーリーを追っていくだけで、アメーバ経営の何たるかがすいすいと頭に入ってくる優れものだ。
 各話、各章ごとに物語仕立てのマンガの後には、要点と重要キーワードを短くまとめた解説コーナーがあり、これが端的に整理されていて実に理解しやすい。

 ストーリーの舞台は大型総合雑貨ディスカウント店・ジャルグルマート新宿店。入社3年目の主人公・美鈴が働くその店舗へ、本社からあるスーパーバイザーがやってきたところから物語は始まる。小さな問題が多発する美鈴の職場には、何が足りないのだろうか?
 本書によれば、その解決手段となる「アメーバ経営」には3つの柱がある。それが(1)全員参加経営の実現、(2)マーケットに直結した部門別採算制度の確立、(3)経営者意識を持った人材の育成、の3点だ。

アメーバ経営の柱(1): 全員参加経営の実現
アメーバ経営ではアメーバ(=会社のなかの小集団)ごとに経営に関わる数字や情報がオープンにされ、全社員が目標を達成しようと、当事者意識を持って経営に参加する。

アメーバ経営の柱(2): 経営者意識を持った人材の育成
独立採算の小集団、アメーバにはリーダーがいる。家計簿のようにシンプルな収支計算表を用いてアメーバを経営し、計画や管理などの経営業務を任されることで、それぞれのリーダーが経営者としての視点を持つようになる。

アメーバ経営の柱(3): マーケットに直結した部門別採算制度の確立
アメーバは、独立採算組織として集団ごとに“社内売買”を行う。これを通じて、普段は顧客と直接やりとりすることがない立場の社員にも、市場価格や顧客の動向が伝わる。

■チームごとの自主性をまとめる“フィロソフィ”の重要性

 主人公の美鈴は、アメーバ経営がお店に浸透し、数字が上向いていく中で、自分が漫然と働いていたこと、店と自分が上向きに変わってきたことに気づいていく。
 ただ、アメーバ経営を導入してうまく行くかに見えた美鈴のお店には、次の新しいトラブルが起こる。自分のグループ(アメーバ)外のミスによってクレームを発生させてしまったのだ。それはアメーバ経営を行った会社で起こりがちな問題だ。

 アメーバ経営では、それぞれの利益を追求するアメーバ(小集団)同士の縄張り意識や対抗意識が生まれてしまいがちだ。また、採算性の向上を目指すがゆえに、人員不足や多忙さも慢性的になってしまうことがある。そうすると、会社の雰囲気はギスギスし、チームの責任者は調整に奔走して、疲弊するばかりとなってしまうのだ。
 そこで登場する、会社全体をひとつに束ねてまとめる重要な理念は、“フィロソフィ”と呼ばれている。フィロソフィは、企業としていかに儲けるか以前に、「人としてどうあるべきか」という根本的な人生哲学である。それは、全員が共有して持つべき統一された指標であり、これを原理原則として、社員たちはアメーバを超えて一丸にならなくてはならない。スーパーバイザーが初日にその説明をしていたものの、美鈴たち社員は、当初そのフィロソフィの重要性に気づいていなかったのだ。
 フィロソフィの意義を理解したジャングルマート新宿店では、美鈴をはじめとした社員たちが、独自のフィロソフィをつくった。そしてそれを全スタッフへ周知徹底を行い、職場の雰囲気もさらに見違えるように良化していく…。

■働き方を見つめ直すことで、生き方についての考えを広げることができる!

「アメーバ経営」は、経営者ひとりに成功をもたらすためのメソッドではない。導入することで会社に変化が起こり、社員ひとりひとりに変化が起こる。全ての業種で、全ての役職で働いている人の変化を促すメソッドだからこそ、これまでにも多くの実践例があるのだ。

 本書の主人公・美鈴は、自分の仕事と働き方について一生懸命考え抜くことで、生き方についても考えられるようになったようだ。
 もしあなたが今、かつての美鈴のように仕事にやりがいを感じにくかったり、働く目的を明確に見出せていなかったりするならば、本書を読むべきだろう。美鈴がどのように幸せなエンディングを迎えるのかを見届けると同時に、読者自身も自分の働き方を見つめ直す大事なきっかけを得られるかもしれない。

文=小林恭