意外? 「道の駅」の多くは赤字。東京人も必見の“うまく行く”経営術とは

ビジネス

2018/3/19

『地方創生大全』(木下斉/東洋経済新報社)

 2014年に官邸主導で地方創生総合戦略なるものが整えられ、全国各地でさまざまな施策が展開されるようになったのは、まだ記憶に新しい。
 その後、どうなったか。地方に関して明るいニュースをあまり聞くことがないと感じているのは私だけだろうか……。ゆるキャラ、B級グルメは話題になるが、それによって本当に地方は活性化したのだろうか?

 素人目から見ても、なにかとモヤモヤした感覚を禁じ得ない「地方創生」。地元の衰退を憂う住民や地方出身者のみならず、これは日本国民全体の問題だと言っても過言ではないだろう。これまでお荷物扱いされてきた日本の地方が自立に目覚め、「稼ぐ地方」へと生まれ変われば、人口縮小時代にあっても、生産性と文化性を高めることが可能になるからだ。

 本日は、課題だらけの「地方創生」に鋭いメスを斬り込み、新たなビジョンを提案する一冊『地方創生大全』(木下斉/東洋経済新報社)を紹介したい。国と地方、行政と民間、政治と市民という複雑な関係 の中で、日々真面目に取り組み がなされているにもかかわらず、まだ成果が出ない地方政策の問題点を、本書はかなり厳しく的確に指摘している。

■みんなが知っている「道の駅」だが、増える「負け組」が地域の重荷に

 本書が斬り込む地方創生の論点は「ネタ」「モノ」「ヒト」「カネ」「組織」。

 そのうち「モノ」問題の象徴として「道の駅」が挙げられている。道の駅について「地元の民間業者が、特産品を販売する商業施設として投資して営業している」と思っている人も少なくないようだが、実際は、約8割が行政による設置だという。そのため、販売努力が足りなかったり、建物が立派すぎてコストが高かったり、果てには「破綻しても行政が責任をとるだろう」と考えて 、いい加減な経営状況になっている施設 も多いと著者は指摘する。本来、道の駅は「カネを継続的に生み出すエンジン」の役割を担わなければならないのに、である。

「休憩機能」「情報発信機能」「地域の連帯機能」という3要素の公共性が期待されている道の駅だが、消費者が「わざわざ行きたい」と思えるような運営をしないとその地域に利益はもたらせない。実際には一般的市場原理にさらされている道の駅が、ただ公共性を意識しているようでは、近所のコンビニにも負けてしまうだろう(コンビニはトイレや駐車場などの公共性も兼ね備えている)。本書では道の駅における運営の課題点を厳しく指摘した一方で、その対立軸として、民間経営で収益を上げている岩手県紫波町の「紫波マルシェ」のモデルを紹介している。

「紫波マルシェ」は、新鮮野菜、三陸の魚介類、畜産加工品やスイーツなどを扱う物販と飲食スペースを備えた複合業態。銀行からの借り入れ で施設を整備し、黒字経営している。全体的な事業計画を構想してそこから逆算し、低コストの建設費に抑えたことや、農産物を卸してくれる農家を事前募集し、出店料をとることでモチベーションの高い生産者を集めたことなどによって、安定的な経営に成功しているのだという。

■人口減少の今後に向けて、今こそ地域の活性化プランを練るとき

 本書による地方創生の問題点の指摘は切れ味が鋭く、その改善策として提示されるビジョンも非常に合理的で具体的であると感じた。

 これからの人口縮小時代の日本を生きていく我々は、都会に住んでいても田舎に住んでいても、その地方の創生や活性化について知らぬ顔をしているわけにはいかない。成熟した国家にしていくためのカギは、まず地方の創生にあると実感させられる一冊だ。

文=K(稲)