タランティーノも惚れた! 71歳・梶芽衣子の本音とは?

エンタメ

2018/4/21

『真実 梶芽衣子』(梶芽衣子/文藝春秋)

 元祖クールビューティーと言えば、梶芽衣子を差し置いては語れない。

 あのタランティーノ監督が、念願かなって梶芽衣子にインタビューした時、ずっと手を握ったままだったという熱狂ぶりも分かるほど、『野良猫ロック』や『女囚さそり』の彼女は、圧倒的な存在感と殺気をはらんだ美貌の持ち主だった。

 そして今でも古びていないのが、そのファッション・センスだろう。『野良猫ロック』の不良少女マコ役のために、自ら選んだ黒いベストとマキシスカート、ロングブーツ、あるいはレザージャケット&パンツにサングラスという70sスタイル、そして『女囚さそり』で披露した黒のマキシコートのポケットに両手を突っ込み、つば広の帽子を斜めにかぶった立ち姿は、ファッションアイコンとして鮮烈すぎるほど鮮烈だった。

 そんな梶芽衣子が、10代で日活女優としてデビューしてから、70代の今に至るまでの本音を語ったのが、この『真実 梶芽衣子』(文藝春秋)だ。本の帯にもあるように「媚びない めげない 挫けない」彼女の生き方が告白されている。

 高校生の時、銀座でスカウトされ、日活に入った彼女が初のアフレコを体験し、勝手が分からず失敗を繰り返す。それを見て嘲笑する先輩には、「笑わないでください。あなたたちは初めからこれができたんですか!」と言い放つ。

 映画『太陽が大好き』では、共演した日活の大スターである浜田光夫が死亡するラストが名物専務の一声で変えられた時も、浜田さんが亡くなったほうが映画の余韻があったとはっきり言ってしまう。そんな真っすぐで全力投球な芝居への思いが分かるエピソードが本書には詰まっている。

 真っすぐなだけではなく、自分の立ち位置をしっかり見据える冷静さがあったことも、本書からは分かる。芝居の面白さが分かり始めた梶芽衣子が、今後の女優としての自分の在り方について考え、優等生タイプの女優ではない自分はどうやっていくべきか考え、非行少女のタイプの女優はいないから、自分はそれで行こうと決める。日活映画特有の無国籍でバタ臭い雰囲気が生かされたクレイジーな青春映画『野良猫ロック』に出演が決まり、非行少女マコとして鮮烈な印象を残すのだが、その役柄になぜ彼女を選んだのか、梶芽衣子が長谷部安春監督に聞くと、「笑顔が全くないから」という答えが返ってきたという。「撮影所を歩いていても食堂にいてもいつも目が吊り上がっている。それだけで選んだ」と。

 笑顔がない。それだけでなく、日活を辞めて東映で出演した「女囚さそり」シリーズでは、梶芽衣子は台詞すら封印する。『女囚さそり』の原作漫画を読んでいた彼女は、「ヒロインが全く言葉を発しなかったら面白くなるんじゃないか」と考え、それを監督とプロデューサーに提案する。前代未聞の提案に両者は面食らうが、結果的に梶芽衣子の判断は『女囚さそり』の大ヒットという結果をもたらす。

 しかし、無言劇の精神的なプレッシャーは彼女を苦しめ、ヒット作ゆえに続編を要求されることとも闘った経緯は、本書を読んでもらいたい。

 また、本書では五社英雄監督の『鬼龍院花子の生涯』が、元々は梶芽衣子の企画であったという秘話も明かされており、筋を通す彼女が苦しんだ思いも吐露されている。「かけもちはしない」という主義を貫き、『鬼平犯科帳』で28年間、おまさを演じた梶芽衣子が、今新たに決意している次なる一歩が、本書の最後に書かれているのだが、その台詞はやっぱり梶芽衣子らしくかっこいい。70歳でこれが言えるとは、無言、笑顔なし、黒ずくめのクールビューティー健在である。

文=ガンガーラ田津美