ジョブズを超えるアメリカ最強の起業家「ピーター・ティール」が何よりも大切にしていること

ビジネス

2018/5/7

『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』(トーマス・ラッポルト:著、赤坂桃子:訳/飛鳥新社)

 世界一のIT技術大国、アメリカ合衆国。その核となっているシリコンバレー。そしてその首領(ドン)として名を轟かす、ピーター・ティールという人物をご存じだろうか。

 現代アメリカ最強の起業家、ピーター・ティール。90年代に「ペイパル」創業者として一世を風靡。その後、投資家として無名時代の「フェイスブック」の将来性をいち早く見抜き、インターネット・バブル崩壊直後という最悪のタイミングにもかかわらず投資を即決。取締役として同社を世界的企業に育て上げる。2016年の大統領選挙ではリベラル派の反発を押し切ってシリコンバレーで唯一ドナルド・トランプ支持にまわり、現在までトランプ大統領の政策顧問を務め、「影の大統領」とささやかれるなど、常に「常識の逆をいく」行動で注目される起業家・投資家だ。

 そんなティール氏の半生から全戦略、ビジョン、哲学、そして独特の破壊的思考法を明かした初の評伝『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』(トーマス・ラッポルト:著、赤坂桃子:訳/飛鳥新社)を本稿ではご紹介したい。

■すべては競争社会での挫折から始まった

 名門スタンフォード大学のロースクールを卒業し、トップエリートとして順風満帆に見える人生を切り拓いていたティール氏は、24歳のときに「完全なる挫折」を味わっている。かなりの狭き門である、連邦最高裁判所の事務官。このポストに就くことができれば、一生の安泰を手に入れることができる。面接もすべてうまくいったと思っていたティール氏だが、結果は不採用。これで完全に打ちのめされた彼は、ニューヨークにいたこの時期を「人生の危機だった」と振り返る。

 その失敗で安泰な人生を手放し、後に大成功を収めた彼は、学生たちにこう助言する。

完全に打ちのめされるような失敗をしたとしても、それがどうしたと言いたい。もっとやりがいのある道はいつだって見つけられるんですから。

■上場の日に部下たちとチェスをする。「自分が永遠に生きるかのように毎日を生きよ」

「ペイパル」が上場を果たした当日、ティール氏はニューヨーク証券取引所のバルコニーに登場して喝采をあびるのではなく、シリコンバレーの自社にとどまって社員たちと一緒に祝うことを選んだ。ペイパル社の殺風景な駐車場で、社員たちと早指しのチェスのトーナメントに興じたというから驚きだ。彼がこのような行為に出るのにも、もちろん彼なりの哲学の裏付けがあるのだ。

「毎日を人生最後の日であるかのように生きよ」という決まり文句を聞いたことがあるでしょう? でも実際は逆です。「毎日を自分が永遠に生きるかのように生きよ」が正しい。つまり、きみのまわりにいる人間を、これからも長くつき合うつもりで扱うべきなんです。きみが毎日下す一つひとつの選択がとても大事です。その結果は時間の経過とともにどんどん大きくなりますから。

 ティール氏の成功の根底にあるのは固い友情だ。そして彼のペイパル時代の仲間たち(テスラ・モーターズのイーロン・マスクやリンクトインのリード・ホフマンなど)も、その友情のおかげで起業に成功した。友人のネットワークを何十年も大切にすることが、自分と会社とに並外れた経済的成功をもたらす。彼のような億万長者は、このことをビジネス界の誰よりもよく理解しているのだ。

 起業・経営術や投資術はもちろん、ドットコムバブル崩壊直後にあえて無名のフェイスブックに投資する「逆張り術」、株式公開当日にわざわざ部下とチェスをするなどといった「人心掌握術」、理想を達成するためにトランプ政権に食い込むほどの「人脈術」、CIAやFBIに無名の自社サービスを売り込む「交渉術」など、日本のビジネスパーソンに必要なスキルは、この本を読めばすべて学べるのではないだろうか。

 時代のせい、不況のせい、ゆとり教育のせい…。ないものを探せばキリがない。でも、本物はそれを逆手に取る。もっと言えば、そこから常識を覆すものを生み出す。それが世界の新しい常識を創っていく。今こそ立ち上がるべき日本のビジネスパーソン。本書から学ぶべきことは実に多い。

文=K(稲)