「自分にとって仕事とは?」「自分に向いてる仕事って?」悩める若者たちのための仕事論

ビジネス

公開日:2018/5/9

『何のために働くのか 自分を創る生き方』(寺島実郎/文藝春秋)

 かつてないほど“転職”という言葉は身近なものになった。よく「新卒で入社する人の3割は3年以内に会社を辞めてしまう」といわれるが、転職サイトがテレビやネットで大量に広告を打ち、世間にも「ブラック企業ならばすぐ辞めたほうがいい」という風潮もある中で、転職する人の割合はますます増えていきそうだ。これから就職活動をする学生も、転職の可能性を見据えた会社選びをしなくてはならないのかもしれない。

 そんなときに、必ず現れる問いは「自分に本当に向いている仕事は何か?」というものではないだろうか。本書『何のために働くのか 自分を創る生き方』(寺島実郎/文藝春秋)には、そんな悩める現代の若者たちが納得のいく仕事を見つけるためのヒントが書かれている。

■そもそも人間はなぜ働かねばならないのか

「人はなぜ働くのか?」と訊かれて即答できる人は少ないだろう。「生活のため」と答える人もいるかもしれないが、ただそれだけの意思で、社会に貢献していると認められ、自分の仕事に納得感を持つことは難しいだろう。

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 著者は、働くことの本質を「カセギ」と「ツトメ」というふたつの要素に分解し、それらが両方満たされることが望ましいという。「カセギ」とは、文字通り“稼ぎ”で、いわゆる経済的な自立のこと。そして「ツトメ」とは、自分の働きで社会に貢献し、世の中をよりよくすることだ。仕事の機械化や細分化が進んだ現代では、最低限の「カセギ」を満たすことは難しくなくなった反面、創造する喜びや自分の成長を感じられるような「ツトメ」の充足感を得ることは容易ではない。

■自分が納得できる企業の見極め方

 それでは、その「カセギ」と「ツトメ」の両立を目指すために、私たちは具体的にどのように働く企業を選べばよいのだろう。著者は、今の若者たちに対して、まずは“自分が企業を選ぶのだ”という意識を持つべきだと語る。ネット上の人気ランキングや企業の知名度やブランド力で決めるのではなく、“自分は何がしたいのか”を突き詰めるとともに、それにマッチした仕事を見つけるための“企業を見抜く目”を養う必要があるという。本書の第5章「企業の見極め方」では、以下のように、企業選びにおいて着目するべき視点が紹介されている。

・企業が収益を生む仕組み
・企業による地元の信用金庫活用法
・「この人のもとで働きたい」と思えるか
・自分は会社に何ができるか
・親の壁を越えろ
・実際に働いてみる

 キーワードだけでは分かりづらいものもあるかもしれないが、すでに企業で働いているベテラン勢にとっても有益な視点なので、ぜひ本書を手に取ってそのノウハウを取り入れてもらいたい。

 著者の寺島実郎氏は、大手総合商社で長年にわたり海外勤務をこなし、一方で個人として多くの著作もあるという、いわばひとつの企業だけに固執しない働き方の大ベテランだ。しかし彼もまた、かつては入社2カ月で辞表を出したいと思うほどの“悩める若者”であったそうだ。自分を要職に引っ張ってくれた上司との出会いや、海外情勢調査の仕事で中東を駆けずり回った泥くさい体験から、社会における自分の役割について仕事を通じて実感できるようになったという。そんな寺島氏だからこそ、今の若者たちに伝えられるメッセージがある。

文=中川 凌