「あなた」という呼び方は取り扱い注意!? 人との距離感を調節できる“うまい呼び方”って?

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更新日:2018/6/11

『うまい呼び方』(五百田達成/サンマーク出版)

 人と関わる上で、呼び方というのは避けては通れない問題だ。また、呼び方ひとつで相手との関係も表すことができる。たとえば「◯◯さん」と呼ぶと、かしこまった印象がある一方で少し精神的距離を感じるだろう。逆に呼び捨てにしたり、ニックネームで呼んだりする場合はくだけた印象になる分、精神的距離も近くなる。このことから、呼び方を工夫することで相手との距離感や関係を調節できるかもしれないのだ。その方法と仕組みを紹介したのが『うまい呼び方』(五百田達成/サンマーク出版)である。

 とはいえ、人間関係の劇的な変化は望めない。つまり、好きな人とすぐに親しくなったり、生涯付き合える友ができるとか、そういう魔法のような方法ではないのだ。呼び方の工夫でできるのは、人間関係の入り口がスムーズになり、風通しをよくすることである。そのために必要な呼び方は2種類ある。相手の呼び方、自分の呼び方の2つだ。

 相手の呼び方は、人間関係を構築するうえで最初の関門となるポイントだ。ここで注意したいのは仲良くなりたい相手や仕事上で良い関係を築きたい相手に対し「あなた」「君」はNGということである。特にビジネスの場において「あなた」というと、呼ばれた方はそれだけで「下に見られた」と感じてしまうのだ。これは「あなた」という呼び方は、通常上司から部下へ、顧客から営業担当者へという状況で使われるものだからだ。ビジネスの場において「あなた」というと、無意識に目上から目下に使うものという感覚がどこかにあるため「あなた」と呼ばれると「下に見られた」と感じてしまうというわけだ。

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 また、プライベートにおいても、仲良くなりたい相手に対して「あなた」はおすすめしない。なぜなら、プライベートな場において「あなた」はよそよそし過ぎるからだ。つまり、「あなた」「君」という呼び方は使うに際してかなりの注意を払う必要があるのである。そのため、人を呼ぶときはなるべく代名詞ではなく、きちんと名前で呼んだ方がいい。ちなみに名前がわからないときは、お兄さん・お姉さんなどいわゆる「親族呼び」が有効だという。ただし、これはあくまで名前がわからない段階での呼び方なので、名前を知ったならそちらで呼ぶのがベストであることは変わらない。

 自分の呼び方に関してだが、本書によると多くの人が自分をきちんと呼べていないという。ただでさえ日本語は一人称が多い。英語が「I」のみであるのに対し、「私」「僕」「俺」「あたし」「自分」「わたくし」「うち」「わし」などなど…。また、自分の属性を一人称に使うこともある(パパは~・ママ~など)。

 さらに、日本文化の場合、相手との関係や状況によって使う一人称も変化する。たとえば、友人と話すときは「俺」と言う人でも上司と話すときは「私」「僕」などに変えるだろう。これは、同じ一人称でも「俺」と「私」では相手に与える印象が全く違うということの証拠だ。つまり、自分の呼び方でも相手の呼び方同様、その人との精神的距離を表すことができるのである。

 人間関係の問題は、生きていく上でどうしても生まれてしまう。それがストレスになっている人も多い。この問題の解決方法は、ひきこもるという極論を除けばうまい対処法を見つけて自分でコントロールしていくしかない。そのコントロール方法のなかに「呼び方」というものがあることも覚えておいて損はないだろう。

文=柚兎