「アベノミクス」ってどんな成果をあげたの? 答えられなかったアナタは要チェック!

ビジネス

2018/6/6

『アベノミクスによろしく』(明石順平/集英社インターナショナル)

「アベノミクス」という政策はもちろん聞いたことがあるだろう。しかし、実際にどのようなことをしていて、どんな結果がもたらされているか、その先に日本の未来がどうなるのか、ということを理解している人は少数派かもしれない。

 アベノミクスの悪い話はあまり聞かない。むしろ、日経平均株価が上昇し、就職氷河期と言われた数年前に比べ新卒採用が売り手市場になっていると聞くこともある。生活の中であまり実感はないものの、少しずつ景気が良くなっている空気を感じてしまうのは、私だけではないはずだ。はたして実態はどうなのか? 『アベノミクスによろしく』(明石順平/集英社インターナショナル)は、そんな安倍晋三首相の名を冠した肝煎りの政策アベノミクスを数々の資料を用いて分析した1冊だ。

■アベノミクスを成す「三本の矢」とは

 安倍首相とエコノミクス(経済)を掛け合わせた「アベノミクス」。要するに、本書は日本経済の話だ。経済と聞くと「難しい」と感じてしまう人が多いかもしれないが、本書は何でも知っているモノシリ生物・モノシリンと太郎くんとの平易な対話形式で解説が進む。そのため、一般的な経済関連の書籍に比べ、経済に親しみがない人でもわかりやすく、読みやすい工夫が施されているのも特長だ。

 さまざまなデータ・客観的事実をもとに分析したアベノミクスの実態に触れる前に、まずはアベノミクスの概略についておさらいしたい。アベノミクスは“三本の矢”と呼ばれる政策の総称で、以下の3つのこと。

(1)大胆な金融政策
(2)機動的な財政政策
(3)民間投資を喚起する成長戦略

 第一の矢と呼ばれる「大胆な金融政策」は、日銀が民間銀行にお金を供給し、世の中のお金の量を増やす政策。お金の量が増えると相対的にお金の価値は下がり、物の価値、つまり物価が上昇する性質がある。簡単に言えば、物価を上げる政策だ。

 これまでの日本は物価が下がり、企業の利益が下がり、従業員の給料が下がり、購買意欲が低下するデフレ(デフレーション)の状態だった。さらに、企業が商品をより多く売ろうとさらに物価を下げる。例えば、牛丼チェーン店の値下げ合戦を覚えている人も多いかもしれない。少しでも値段を下げ、牛丼を食べてもらっても、最終的に利益は下がってしまう。しかし、他の競合店にお客を取られないよう、値下げの動きは止められない。この状態が長く続いてしまった日本。このデフレを脱却するため、お金の量を増やし、物価を上げ、企業の利益を上げ、給料を上げ、購買意欲を向上させることが、第一の矢の目的である。

 第二の矢は政府が公共事業などを行うことで、国民にお金を行き渡らせる政策。第三の矢は規制緩和などによって、企業が利益を上げ儲けやすい環境を作り、さらに経済を活性化させるというものだ。

■アベノミクスは、我々生活者に何をもたらしたのか

 アベノミクスが行われた結果、はたして日本経済は改善されたのか。結果は残念ながら、停滞を続けたままだ。むしろ、物価だけが上昇するスタグフレーションという状態になってしまっている。要するに、給料は変わらず、物の値段だけが上がっているという我々生活者にとって最悪の状況だ。アベノミクスは経済活性化、賃金上昇と物価上昇がほぼ同時に起こることが本来の目的。アベノミクス以前に望んだ成果は、出ていないのが実情だ。

 また、冒頭でアベノミクスの成果として挙げた日経平均株価の上昇は、実は世界全体における円安の動きによるもの。雇用改善は少子高齢化、そして高齢化に伴う医療・介護分野の需要拡大が原因とのこと。つまり、少子高齢化におけるプラス面が作用したにすぎず、雇用改善の動きはすでに民主党政権から見られていたという。この他にも、言葉だけが独り歩きするアベノミクスの知られざる一面が、本書で数多く語られている。

 本書の最後にはアベノミクスの副作用について書かれており、このまま放置を続ければ、日本経済が破綻してしまう可能性もあるという。もちろん本書の予測全てが正しく、これから必ず起こることだとは言えない。しかし、「知らない」「わからない」「見たくない」と安易に蓋をしてしまうには、あまりにも大きな問題だ。まずは今起こっていることを知ること。そして、次には「森友・加計問題はもういいから、真っ先に経済を何とかしてくれ!」と声をあげる必要があるだろう。

文=冴島友貴