毛が抜けやすい時期って? 薄毛が気になる人にすすめたい“科学”本

生活実用

更新日:2018/7/9

『薄毛の科学』(日刊工業新聞社)

 30代半ばにもなると、自分に絶望する瞬間が増えてくる。一日中動き回った翌々日に朝方に、突如として押し寄せてくる筋肉痛。今日はオールだなんて意気込んでみても、飲み続けているうちにふと猛烈な睡魔に襲われるなど、気持ちと身体が追いつかない自分をだんだんと責めたくなるときもある。

 そして、もう一つ「自分はもはや若くないのか……」と思わされる瞬間が、朝方の枕元や入浴時にみられる抜け毛である。この果てには何が待っているのかと、それを見るたびに不安がつきまとうものだが、そんな疑問から一冊の気になる本が目に留まった。複数の医師たちが監修・執筆した『薄毛の科学』(日刊工業新聞社)である。

■秋に抜けやすいって本当? 毛のサイクルを知る

 初めに、毛のメカニズムに迫っていきたい。代謝を繰り返しているというのは何となくイメージできるが、本書では、毛が成長してやがて抜けるまでのサイクルが紹介されている。

advertisement

 毛は主に「成長期」と「退行期」を繰り返す。成長期には毛の根元にある「毛母」と呼ばれる部分で、細胞分裂が活発に行われる。やがて、退行期を迎えると徐々に細胞が死滅していき、休止期を経たあと、次の成長期を迎えたときに、古い毛髪が抜け落ちていくのだという。

 ヒトの場合、それぞれの期間は成長期で2~6年。その後、2~3週間で退行期を迎え、約3ヶ月間の休止期を経たのち、ふたたび成長期へとさしかかる。すべての毛が一定のサイクルを保っているわけではなく、それぞれの比率は、成長期毛が約85~95%、退行期毛が1%、休止期毛が10%前後。

 ただ、成長期毛の比率は春ごろに高く、秋ごろに低くなるといわれているため、まことしやかに言われる「秋になると抜け毛が増える」というのは、科学的にみて間違いはないようだ。

■古代ローマの軍人・シーザーも悩んでいた? 人々と薄毛の戦い

 近ごろ、年齢を重ねるにつれて髪の毛が薄くなる「AGA(男性型脱毛症)」などの言葉もよく聞かれる。しかし、現代人と同じく、歴史上の先人たちも似たような悩みを抱えていたようだ。

 例えば、月桂樹の王冠をハチマキのように身に着けた面持ちが印象にある、古代ローマの軍人・シーザーも実は、威厳を保つため王冠で薄毛を隠していた一人。また、16~17世紀の貴族社会ではウイッグで薄毛を隠そうとしていたなど、今も昔もコンプレックスに思う人たちが多かれ少なかれいたようだ。

 一方、現代では植毛などの様々な技術がみられるが、その礎となったのは日本が高度経済成長を迎えた1959年ごろ。アメリカのオーレントライヒという学者が開発した「パンチグラフト(円形状植毛)」と呼ばれる、後頭部の頭皮を毛根ごとくり抜いて薄くなった箇所に移植するという技術が発表されると、世界的に広まった。

 現代では、毛の再生治療も様々な発展を遂げている。本書を読むと、人の髪の毛にまつわる様々な知識を学べるが、薄毛に悩む人にとっては、自分が今どんな状況にあるのかを知る手がかりにもなる一冊である。

文=カネコシュウヘイ