『ONE PIECE』89巻「どうした麦わらァ!!! これでもう終わりかァ!?」最強の幹部を相手に男の勝負が光る!

マンガ

更新日:2018/6/5

『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)

 サンジを奪還するべく始まったホールケーキアイランド編。トットランドに潜入したルフィ一行がそれぞれに役割を果たしていく。

 カタクリと壮絶な戦いを続けるルフィ。

 ママの“食いわらずらい”を止めるべく“最強のケーキ”を作り上げたサンジ、プリン、シフォン。

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 そのケーキを、サンジたちと共にママのもとへ届けようと運ぶファイアタンク海賊団。

 ルフィと約束したカカオ島へサニー号で向かうナミ、チョッパー、ブルック、キャロット、ジンベエ。

 そして、そんな仲間たちのため雄姿を見せたペドロ。

『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)89巻にして、戦いはいよいよ終幕に入る。

■ルフィとカタクリの男の勝負

 89巻でキラリと光るのが、ビッグ・マム海賊団の幹部の中で最強を誇る“3将星”カタクリとルフィの死闘だ。懸賞金10億ベリーを超える実力者を前に、はじめは防戦一方のルフィだったが、少しずつ両者が拮抗していく。“覇気”の1つ“見聞色”を、ルフィがカタクリの到達する域にまで体得し始めたのだ。

 序盤は“格下のルーキー”だと見下していたカタクリだったが、低確率ながら未来を読み始めたルフィを、いつしか対等の敵とみなし始める。

「どうした麦わらァ!!! これでもう終わりかァ!?」

 肩を弾ませながら叫ぶカタクリ。

「終わらせる……!!!」

 血だらけで全身を震わせながら立ち上がるルフィ。

 両者の黒い拳がぶつかり合うたび、読むこちら側も胸が熱くなる。おのれの全身全霊をかけて目の前の敵に向かっていく。何も考えない。ただ、勝利だけを信じてがむしゃらに拳を出し、殴り、殴られ、倒れ、立ち上がり、そしてまたぶつかっていく。

 これぞ「男の勝負」だ。

 ドレスローザ編でも死闘を繰り広げたが、あの戦いの背後にはドフラミンゴという巨悪があった。「勝ってほしい」「悪をやっつけてほしい」。ルフィを見てそんな願いが募った。

 しかし今回の戦いは、認め合う2人が、おのれのプライドをかけて真剣勝負を繰り広げる。もちろんカタクリは悪だ(ルフィも悪だが)。しかし新世界編へ突入して、これほど純粋で熱くなる勝負はなかったかもしれない。

 男が憧れる、漢と漢の決闘。どちらが上を行くか。たったそれだけのために命をかける。子どもの頃に男子の誰もが夢見た真の漢の姿が、その雄姿が、両者の戦いで表現されている。

■ますます強くなるルフィとサンジのきずな

 一方、ルフィの勝利を信じるサンジの姿も見逃せない。ホールケーキアイランド編で一貫して描かれるルフィとサンジのきずな。この両者の関係にも胸が熱くなる。

 冒険を始めてからというもの、ルフィはいつも仲間を困らせてきた。アラバスタ王国でクロコダイルのみえみえのワナにはまり、仲間を道連れにしたルフィ。空島でなぜか大蛇の腹の中に入ったルフィ。エニエス・ロビー編では2度も作戦を守れなかった。天竜人は殴るし、インペルダウンに潜入するし、しらほし王女を連れ出すし……ルフィが勝手な行動をとるたびに仲間は絶叫した。

 だからこそ、ファイアタンク海賊団にケーキを預け、ルフィを迎えに行くサンジの言葉が光る。

「艦隊と軍隊のど真ん中にルフィは現れる…!! 船長は必ずおれが救い出す……!!!」

 ルフィは必ず勝つ。そして、俺たちが一番困る場所に姿を現す。そんな麦わらの一味らしい“信頼”がサンジを歩ませる。

 ルフィもカタクリとの戦闘中、力強い言葉を発する。

「あいつらに……!!おれは信じられてる!!!」

 仲間を守るために身を挺したサンジを、そんなサンジを助け出すために命をかけて戦い続けるルフィを、お互いに信じ合う。ますます強く結びついた2人のきずなに、またも胸が熱くなる。

 ホールケーキアイランド編も終幕が近づく。世界最強クラスの海賊団を相手にして、ルフィ一行は無事に帰還できるのか。

文=いのうえゆきひろ