認知症やうつの予防にも! 大人になった今こそやりたい「音読」

暮らし

公開日:2018/6/10

『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(山口謠司/自由国民社)

 突然ですが皆さんに質問です。最後に音読をしたのはいつですか? おそらく多くの方は、その記憶は学生時代にまでさかのぼるのではないでしょうか。

 大人が読書をするときは、黙読が一般的ですよね。その方が文章を読むスピードは断然速いことでしょう。試験や学習や趣味のために読書をするとなると、かなり量もありますのでやはり音読は適していないと思われます。何せ、音読は時間がかかりますし、体力も使います。

 でも、それは音読の長所でもあるのです。小学生の頃のように、大きく口を開けて明るくハキハキと、自分の声を通して文章を心と頭、そして体全体に響かせることは、実はとても健康的な作業なのです。

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『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(山口謠司/自由国民社)は、大人向けに作られた音読の本です。本書には「坊ちゃん」(夏目漱石)、「走れメロス」(太宰治)、「ごん狐」(新美南吉)、「一握の砂」(石川啄木)など、有名な文学作品から隠れた名作まで、多くの小説や随筆、詩や短歌などが「1分を目安に読める分量」で収録されています。

 それぞれの文章は大きな文字で書かれ、漢字にはふりがながあてられて読みやすく、また、作品や作者、語彙の解説、そして音読をする際のワンポイントアドバイスが充実しています。私も本書を手に取って実際に音読をしてみましたが、ちょうど1分間くらいで気持ちよく音読をすることができました。

 賢い猫になった気分で「吾輩は猫である」(夏目漱石)を堂々と音読すると、世界がいつもとは違う視点で見えているような気がしました。恋人に語りかけるような口調で「湖上」(中原中也)を読むと、じわじわと心が落ち着いて、ロマンチックな情景が頭に浮かびます。

 一言一句を嚙みしめながらしっかりと発音することで、文章の中の世界にたっぷり身を浸すことができたように感じます。黙々と読み込む読書も良いですが、こうやって音読をする習慣もつけていきたいと思いました。

 本書の解説によると、音読には、「気持ちが落ち着く」「やる気が出る」「ストレスが解消し、抵抗力が上がる」「脳が活性化される」「誤嚥(ごえん)性肺炎の予防」など、多くの効用があるそうです。そしてこの幅広い効果は、認知症やうつの予防にも役立つと期待されているのだといいます。

 また本書を通じて、音読はさまざまなシチュエーションで役に立つとも感じました。仕事が煮詰まったときの気分転換や、寝起きの脳の運動、就寝前のリラックスタイムなど、その時の気分に合わせた作品を音読することは、かなり気分が良いものです。

「子どもだけのもの」にしておくには勿体なさすぎる。音読には、凄まじいパワーがあるような気がします。大人のあなたにこそ勧めたい「音読」。ぜひ試してみてはいかがでしょうか?

文=K(稲)