白戸家シリーズ、三太郎シリーズ…。有名CMを作ったトップクリエイターに学ぶコピーの書き方

ビジネス

2018/6/18

『全米は、泣かない。』(五明拓弥/あさ出版)

 ライターやコピーライターでなくても、人に何かを伝えるために文章を書くことは意外と多い。Twitterなど、限られた文字数で不特定多数の人の目に触れる文章を書くことも、今や一部の人の趣味にとどまらず、多くの人の生活の一部になっている。しかし、書いてもイマイチ反応がない、思った効果が得られない、とモヤモヤしている人も少なくない。人に読ませる文章、人の心に刺さる文章というのは、いったい何が違うのか。いったい、どのようにして生み出されているのか。

『全米は、泣かない。』(五明拓弥/あさ出版)は、そんな“知りたい”を7人のプロの目線で、インタビュー形式で伝えてくれる画期的な本。本書を通してインタビューを担当しているのは、お笑いトリオ「グランジ」の五明拓弥さん。五明さんは、初めて作ったという東京ガスのラジオCMで、東京コピーライターズクラブが主催している「TCC新人賞」を受賞したという実力派。しかしそれは、実は芸人としての日々の努力の賜物だったのだという。ラジオCMは、設定やルールがある中で、登場人物を考えてストーリーを作っていく。これはお笑いのネタ作りに似ているのだとか。そしてこういったことは、よほどの天才でない限り、一朝一夕ではできない。五明さんを含め、面白い人は、皆努力をしているのだ。

 そんな五明さんとの1人目の対談相手は、ソフトバンクモバイルの「白戸家シリーズ/ホワイト家族」などのCMを手掛けている澤本嘉光さん。澤本さんがコピーライターになって最初にしたことは、コピー年鑑を書き写すことだった。キャッチコピーだけでなく、ボディコピーまですべて書き写すよう先輩に指示されたんだとか。これをやっていく中で、心地よいリズムや文字数が分かるようになり、さらに過去の作品を多く知ることができたと話している。過去の作品をたくさん脳内にストックしておくことで、アイデアが生まれやすくなり、仕事もスムーズになるそうだ。たしかに、自分が普段何気なく見ているまったく関係のないもの同士がふとした時に繋がって、何かを思いつくことも多い。こういったことの蓄積が、時を重ねれば重ねるほど大きな差になっていくのだろう。

 また、2人目の対談相手、auのCM「三太郎シリーズ」を手掛ける篠原誠さんも、「アイディアは思い浮かぶものじゃない」と話している。自ら課題に制限をかけたり、一度白紙に戻したりしながら、とにかく掘り下げてひたすら考えるのだという。CMは、一般的な芸術作品とは違ってあくまで広告であり、それ故に人を不快にさせてはならないという約束事がある。強烈なインパクトを与えても、商品を欲しいと思ってもらえなければ意味がないからだ。しかし無難なところに落ち着いていては面白くない。普通に暮らしている人に刺さるような、それでいて商品を欲しいと思える、魅力が伝わるものを生みなさなくてはならない。このバランスが難しいのだそう。

 また、各対談の間には、各クリエイターから出された課題に五明さんが挑み、その結果が添削付きで掲載されている。

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▲添削ページ。こちらは、「墓参りをする人の数、回数を増やすためのキャッチコピーを書け」というもの。

 プロが入れる赤字を見ることで、普段どうやって書いているのかが分かるだけでなく、目のつけどころ、言葉の使い方・選び方まで知ることができるのだ。

 どの対談も、添削も、実際に働いているプロならではの生の声で、こだわり、経験、努力、技術が感じられる非常に貴重な内容。思わず、今日からすぐにでも実践してみたくなる内容ばかりだ。この『全米は、泣かない。』には、ほかにも、資生堂のTSUBAKI、新潮文庫「Yonda?」などのコピーを手掛ける谷山雅計さん、LUMINEの「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」などのコピーを手掛ける尾形真理子さん、ビタミン炭酸MATCHやカロリーメイトのCMを手掛ける福部明浩さん、映画『仁義なき戦い』などのコピーを手掛ける関根忠郎さん、お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんとの対談が収められている。

文=月乃雫