もしも久米田康治作品に「スターシステム」を使ったら……? その夢、『スタジオパルプ』が叶えます!

アニメ・マンガ

2018/6/22

『スタジオパルプ1』(久米田康治/白泉社)

 読者諸氏は「スターシステム」という言葉をご存じだろうか。漫画に詳しい人なら覚えがあるかもしれないが、これは「漫画のキャラクターを役者に見立てて、さまざまな作品に登場させる」ことを指す。漫画の神様・手塚治虫先生が創出したものとされ、確かに手塚先生の漫画には「ヒゲオヤジ」や「田鷲警部」など複数の漫画に登場するキャラクターが数多く存在する。以降、この手法は他の漫画家たちも使っていくことになるのだが、ここにまた新たな作家がこのシステムで漫画を描いた。漫画家・久米田康治氏の『スタジオパルプ1』(久米田康治/白泉社)である。

 久米田氏といえば現在連載中の『かくしごと』の他、アニメ化された『さよなら絶望先生』などのヒット作を持つ人気漫画家。氏がこれまで描いてきた漫画作品のキャラクターが「スターシステム」によって一堂に会するとあれば、ファンならずとも手に取ってみたくなるというものである。

 物語は主人公・役者丸ひろ子が「スターの集うエンタティメントの都」へやってきたところから始まる。しかし周囲を見渡しても、スターが全然いなかった! 主人公の前に現れた「彩園すず(『かってに改蔵』のキャラ)」っぽい人物によると、この街には「B・C級のスター」しかいないのだという。つまり自身のキャラクターを「底辺のスター」として扱うという、まさに冒頭から「久米田節」炸裂の展開。この後も「枕営業」や「共演NG」といった芸能界ネタを独自の視点で斬っていく、久米田漫画ファンにはお馴染みのノリが楽しめる。

 そして「スターシステム」による久米田作品のスター共演は、本作最大の見所。『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』といった作品のキャラクターたちが同一の世界で掛け合いをするさまは、まさに久米田ワールドのオールスター戦である。一方で、『かってに改蔵』のメインどころであった「勝改蔵」「名取羽美」「坪内地丹」らが頻繁に登場するため、久米田氏は同業者から「『かってに改蔵2』じゃん」などと揶揄されているようだが、読者としては懐かしいキャラたちの健在ぶりが堪能できるというだけでも感慨深い。

 もちろん氏のことゆえ、今後は他の作品のメインキャラたちもどんどん参加してくることだろう。しかしその度に「これはあの作品の『2』じゃん」などといわれてしまう未来が予想できて絶望した! ……なんてことを考えてしまうあたり、私も多かれ少なかれ“久米田ワールド”に取り込まれている気がしなくもない。

文=木谷誠